初詣といえば、言わずと知れた正月の恒例行事である。例年であれば正月三が日という短い期間に、明治神宮をはじめとする日本全国の著名な神社仏閣に100万人単位の初詣客がつめかけるのが恒例であるが、現在は新型コロナの感染拡大防止のために「分散参拝」が推奨されるというこれまでになかった状況が生じている。
順位 | 神社仏閣名(都道府県) | 人出(万人) |
1 | 明治神宮(東京) | 319 |
2 | 成田山新勝寺(千葉) | 298 |
3 | 川崎大師(神奈川) | 296 |
4 | 伏見稲荷大社(京都) | 277 |
5 | 鶴岡八幡宮(神奈川) | 251 |
6 | 浅草寺(東京) | 239 |
7 | 住吉大社(大阪) | 235 |
熱田神宮(愛知) | 235 | |
9 | 大宮氷川神社(埼玉) | 205 |
10 | 太宰府天満宮(福岡) | 204 |
2020年の正月にも300万人以上が初詣に訪れ、初詣人出ランキング首位を占めた明治神宮は、12月31日から1月1日にかけて、恒例の「終夜の開門」を取りやめると発表した。これは戦時中以来76年振りのことだが、そうせざるを得ないほど明治神宮が初詣先として人気の神社だということを示している。
以下、初詣の成立と明治神宮の人気の歴史的背景について、拙著『初詣の社会史』(東京大学出版会、2015年)の内容にもとづいて説明していきたい。
明治神宮の誕生がいつか、ご存知ですか?
1990年代前半に、当時大学生だった山口輝臣氏(現・東京大学准教授)が明治神宮の初詣客に「この神社がいつ誕生したと思いますか?」とアンケートをしたところ、ダントツで多い回答は「明治時代」だった(山口輝臣『明治神宮の出現』吉川弘文館/正解は大正時代)。初詣客の大半は「明治神宮って名前だから、明治に完成したんじゃね?」くらいの感覚であったのだろう。
つまり、明治天皇の死去後にその「御聖徳」を記念してつくられたという基本的な来歴すら知らない人たちが多数つめかけるというのが、現在の明治神宮の初詣なのである。
意外なことに、戦前の明治神宮では、正月7日間と同じくらい、例祭が行われる11月1日から3日にかけての参拝客数が多かった。それが1950年ごろから正月三が日の参詣客が激増してきて、現在では両時期を比べるまでもない(『明治神宮五十年史』)。
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