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Tuesday, June 29, 2021

「大切な人の自死」を経た著者が贈る、「遺された人々」のこれから。『逝ってしまった君へ』ついに発売! - PR TIMES


2019年1月。私は、古い友人のひとりを失った。
友人は突然、自らの意思で死を選んだのだ。
彼は私の大切な友人でもあり、私のはじめての恋人でもあった――

 作家として声優として活躍中のあさのますみ氏。2020年3月、自らの意志で死を選んだ友人についてのエッセイをWEB上で公開しました。

「大切な人の自死」「遺された人々の想い」を綴った当作は、「鬱」「自死」といった昨今の深刻な社会問題を扱いながらも、「それでも君がこの世界に必要な理由」を切実に訴える内容が多くの読者の胸を打ち、大きな話題を呼びました(「cakesクリエイターコンテスト2020」受賞)。

この度、書籍化が望まれていた当作を大幅に加筆しまとめた長編エッセイ『逝ってしまった君へ』が、小学館より発売されました。


【本書の内容】
あさのますみが体験した、大切な人の「自死」。
大切な人を失って初めてわかる、大きな悲しみと日々の「気づき」。
遺書にあった自らに向けたメッセージ、告別式、初めての「遺品整理ハイ」…そして「君」を失った悲しみの中で見つけた一つの光。
『誤解を恐れずに言ってしまうけど、君を失って、私はひとつ、大きなものを得ました。それは、自分を自分のままでいいと思える強さです』
『たった一つのものさしで自分を測ることに、意味なんてない』
『君がそこにいてくれることが、すべてでした。君の存在そのもので、私はどこまでも満ち足りた気持ちになったのです』
あまりにも突然で悲しい出来事を経た「遺(のこ)された人々」のその想いを、逝ってしまった「君」への手紙の形で綴る。日々悲しみの中にいるあなたにこそ読んでほしい、大切な人へ向けた祈りに満ちた随想録。

【書籍情報】
『逝ってしまった君へ』
著者 あさのますみ
定価1650円(税込)
発売日2021/6/30
四六判・192P
ISBN 9784093888172
小学館
詳細はコチラから
https://www.shogakukan.co.jp/books/09388817

↓本書『逝ってしまった君へ』の一部抜粋。

誤解を恐れずに言ってしまうけど、君を失って、私はひとつ、大きなものを得ました。それは、自分を自分のままでいいと思える強さです。

私の職業は、声優。人気商売です。誰かに選ばれれば仕事があるし、誰にも選ばれなければ、その日の仕事はなし、収入もゼロ。そんな仕事です。
(小略)声優になって二十年、自分で自分を活躍していると思ったことは、ただの一度もありません。私の周りには、常に私より選ばれて、忙しそうにスタジオを飛び回っている人がいる。対して私は、いつでもフル稼働、というわけでは決してない。
 そういう自分を、たまらなく不甲斐なく思うこともあります。選ばれない日が続くと、「どこがいけないんだろう」と足りない部分ばかり数えて、自分じゃない誰かを眩しく感じることもあります。もしも仕事がなくなってしまったら、今私の周りにいる人たちは、きっと全員いなくなってしまう――そう想像して、人生の軸を奪われるような恐怖に襲われることもあります。自分がなんの価値もない存在に思えて、恥ずかしく、情けなく、涙が出てしまったこともありました。

 でも。君を失って私は、本当にギリギリのところで、こう思えるようになりました。「いや、そうじゃないんだ」と。

 君が遺したメモには、仕事に関する不安が、たくさん書いてあったでしょ。「今の仕事を失ったらなにもない」「この会社でしか働けない」「周りの人たちが離れていく」――それはまさに、私がいつも思うことで、だからこそ、そうじゃないのに、と叫びたくなりました。全然そんなことない、そもそも君の素敵なところは、そんなことではちっとも測れないのに。

 私は、何度も、何度も、何度も、何度も――数えきれないくらいたくさん、時には涙を流しながら「君が今、生きてここにいてくれたら」と思いました。そうしたら、君が「もうわかったよ」と言うまで、言葉を尽くして、そうじゃないってことを伝えるのに。
 どんなに願ってもそれが叶わなくなってしまった今、私は代わりに自分自身に、こう言い聞かせます。

「たった一つのものさしで自分を測ることに、意味なんてない」

 あまりにありふれた言葉で、陳腐に感じるかもしれません。でも私は、君に伝えたかったと心の底から思ったとき、この言葉が生まれてはじめて、実感をともなって腹に落ちました。そしてそのことで、ともすると見失いがちだった自分自身を、取り戻すことができました。私はそれを、君を失ったことで得た「強さ」だと思っています。


【あさのますみ氏プロフィール】
秋田県出身。
國學院大学卒業後、声優に。
趣味はカメラ。
2007年、はじめて書いた創作物が小学館で大賞を受賞。
それをきっかけに、声優業は『浅野真澄』として、
文筆業は『あさのますみ』として、名義を分けて仕事をするように。現在、猫や鳥と暮らしながら、二足の草鞋で活動中。

【公式サイト】https://www.masumin.net/
【公式Twitter】@masumi_asano

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