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Monday, July 10, 2023

人に教えたくなるフレグランスの話vol.3 ASTIER de VILLATTE いにしえの香りを蘇らせる壮大なプロジェクト遂行中 - FASHIONSNAP.COM

「アスティエ・デ・ヴィラット」創業者の2人。左からブノワ・アスティエ・ド・ヴィラット、イヴァン・ペリコリ。

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 白の釉薬をかけた温もりのある陶器で人気の「アスティエ・デ・ヴィラット(ASTIER de VILLATTE)」。「歴史を掘り起こして現代の職人の手で蘇らせること」をコンセプトとしているのは、創業者のひとりであるブノワ・アスティエ・ド・ヴィラットがボザール美術学校在学中に「前を見ろ、後ろを振り返るな、モダンなものをやれ」と繰り返し言われていたことがきっかけだという。「過去にインスピレーションを得て、さらにモダンにクリエイティブなものを作りたいと思ったんだ」

 そんなブランドコンセプトにぴったりのフレグランスコレクションが「トロワ・パルファン・イストリック」。「3つの歴史上の香り」を名調香師ドミニク・ロピオンが限りなく忠実に再現したものである。

左から:ル・デュー・ブルー、アルタバン、レ・ニュイ パルファン 各30mL スプレー 税込3万3000円

 まずひとつは「ル・デュー・ブルー」。インスピレーション源は紀元前4000年の古代エジプトでファラオや高僧が使用していた“キフィ(聖なる煙)”。複数のレシピが現存することでも知られる香りで、香料の数もレシピによって10から16、多いものでは50にもなるという。

「ル・デュー・ブルー」のイメージビジュアルは、古代天文学者が使用した天体観測機器、アストロラーベ。

 2つ目の「アルタバン」は紀元前2世紀ごろ、古代イラン王朝のパルティア王のために作られた香りの再現。“王の香り”にふさわしく、インドのレモングラスやリビアのシソ、アラビアのシナモンなど異国から取り寄せた24のハーブを用い、ローマの貴族たちに崇められていたという。

パルティア王を思わせる塑像は「アルタバン」のイメージビジュアル。

 そして「レ・ニュイ」。19世紀のフランスの作家、ジョルジュ・サンドが愛用した香りが原点。ジョルジュの末裔が保存していた香水瓶に残っていた香りのほんの一部を抽出し、クロマトグラフィー解析で再現したものである。

10mLサイズのパルファン3種をセットした「トロワ・パルファン・イストリック コフレ」(税込4万1250円)。その創作の舞台裏を明かした希少な活版印刷本がもれなく付いてくる。

 いったいなぜ、このような壮大なプロジェクトが始まったのか? そもそもはロピオンが20年来続けている、歴史上の香りに関するリサーチが原点だ。

 「人類学者で哲学者、そして香水史家でもあるアニック・ル・ゲレ博士から依頼があって、こすると香りがする書籍の制作を手伝ったことがあるんだけれど、古代エジプトのキフィから物語が始まるんだ。そのおかげでいくつかの古代の香りのフォーミュラを古書からひもといたことがきっかけだね」

葉の絵が描かれた英書

英仏併記の活版印刷本にはアニック・ル・ゲレによる解説、ドミニク・ロピオンとブノワ・アスティエ・ド・ヴィラット、イヴァン・ペリコリによる鼎談、主要香料23種の説明が植物のイラスト入りで掲載されている。

 この壮大かつユニークなプロジェクトの裏側やそれぞれの香りの原点について詳しく知りたければ、「トロワ・パルファン・イストリック コフレ」(税込4万1250円)にセットされている活版印刷本をぜひ読んでほしい。英語・仏語併記だが、香水好きには必読の書だ。

 本書に掲載されている鼎談の締めに「これはほんの始まり」と書かれているとおり、香りの歴史を探る旅はまだまだ続く。年内には登場するだろうと思われる次の香りは、いったいどのようなオリジンなのか、想像力たくましく待ち望みたい。

(文:ビューティ・ジャーナリスト 木津由美子)

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