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Friday, September 25, 2020

“非アイドル映画”の青春物の佳作 「小説の神様 君としか描けない物語」 - 時事通信ニュース

2020年09月26日12時00分

青春の屈折と明朗さを体現した佐藤大樹(右)と橋本環奈 (c)2020映画「小説の神様」製作委員会

青春の屈折と明朗さを体現した佐藤大樹(右)と橋本環奈 (c)2020映画「小説の神様」製作委員会

  • 青春群像劇としても楽しめる「小説の神様 君としか描けない物語 (c)2020映画「小説の神様」製作委員会

 イケメン男女二人が並ぶポスターやチラシのビジュアルから、ティーン向けのラブコメディーを予想する向きが多いかもしれない。だが、そんな先入観を良い意味で裏切ってくれる青春映画の佳作だ。

 映画「小説の神様 君としか描けない物語」は「書くことの魅力」にとらわれた若者たちを描く正統派の青春物語。大ヒットした「HiGH&LOW」シリーズを手掛けた久保茂昭監督が、ミュージックビデオ(MV)的な演出も交えながら、若い演技者から瑞々(みずみず)しい演技を引き出している。

 原作は相沢沙呼の同名小説。千谷一夜(ちたに・いちや)のペンネームで活動しながらスランプに苦しむ高校生作家の一也(佐藤大樹)が、担当編集者の勧めで同じ高校生作家ながら大ヒットを連発する詩凪(しいな=橋本環奈)とタッグを組む。ナイーブな一也と、勝ち気な詩凪。物語は、対照的な性格の二人がもがき苦しんで、作品を生み出していく姿をつづる。

 一也役の佐藤はダンス&音楽グループ「EXILE」と「FANTASTICS」のパフォーマー。橋本は出演作が絶えない若手人気女優。観客の多くは甘いラブロマンスを期待するに違いない。

 だが、恋愛の要素はほとんどなく、物語の根底にあるのは「小説を書く」という大テーマ。そこで描かれるのは、小説の持つ力を信じながらも、容易に理想には届かず、時に読者の心無い中傷で心が折れそうになる等身大の若者の姿だ。

 二人が直面する悩みは、青春時代には誰もが通る道であり、時代や性別を問わない。普遍的なテーマを内包した物語は、主人公と同世代の若者だけでなく、人生経験を重ねた大人が見ても心に突き刺さるだろう。

 佐藤は実年齢は20代半ばだが、違和感なく繊細な男子高校生になり切り、普段のパフォーマーの姿を全く感じさせない。これまで舞台やドラマ、映画でキャリアを積んでいるだけに、演技にも安定感があり、座長役としての重責をしっかりと果たしている。

 詩凪役の橋本も、女王様然と振る舞いながら、内面には複雑な悩みを抱えた女子高生を巧演。その演技力にはもともと定評があり、最近はもっぱらアクの強い役柄や作品で存在感をアピールしていたが、今回は正統派でもあるヒロイン像を見事に体現。詩凪の心の闇もリアルに表現し、演技者としての底力を見せつける。

◇MV的な演出交え、音楽映画としても見応え
 物語は章立てで展開し、一也と詩凪に加え、二人と同じ文芸部に属する部長の正樹(佐藤流司)や、新人部員の秋乃(杏花)のドラマも語られる。作家志望ながら自身の実力の限界を知り、サポートに徹しようとする正樹の描写なども印象的で、一種の群像劇としても楽しめる。

 編集者役の山本未來、一也の両親役の片岡愛之助、和久井映見ら実力派のベテランが脇を締め、若い俳優陣の魅力をさらに際立たせる。中でも、歌舞伎界にありながら、近年は映像作品でも印象的な演技を見せる愛之助の「化けっぷり」は一見の価値あり。その実力を再認識できるだろう。

 MVの世界で才能を認められた久保監督の作品らしく、要所に若手ミュージシャンの歌が挿入される。時に音楽がやや過剰に聞こえる場面はあるものの、曲の多くは登場人物の心情に的確にシンクロし、見せ場を盛り上げる。

 参加ミュージシャンは佐藤と同じ事務所の所属で、意地悪い見方をすれば営業戦略の一環なのだが、監督はその状況を逆手に取り、音楽映画としても見応えのあるものにしている。スランプに苦しむ一也の心情を表現するために冒頭の場面をモノクロで展開させ、ある瞬間にカラーに転じさせるなど、映像面でも見どころは多い。

 爽やかな青春物でありながら、「芸術とは何か」という大命題を観客に突き付け、ネットの匿名の中傷が小説家を追い込むといった現代社会の病理や闇にも切り込む。一見、アイドル映画のような体裁を取りつつ、さまざまなチャレンジを試みた作り手の姿勢に拍手を送りたい。

 「小説の神様 君としか描けない物語」は10月2日公開。(時事通信社編集委員・小菅昭彦)。

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