「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の会社社長、野崎幸助さん(当時77歳)が急死した事件で、県警は元妻の須藤早貴容疑者(25)が多量の覚醒剤を飲ませて殺害したとみて調べている。自宅から微量の覚醒剤が見つかったが、実際にそれが「凶器」として使われたのか、立証はこれからだ。過去の同種事件では殺意が立証できなかったケースもあり、捜査のハードルは高い。
事件は2018年5月24日夜に発生。須藤容疑者と家政婦の女性が、自宅2階寝室で倒れている野崎さんを発見した。午後9時ごろに急性覚醒剤中毒で死亡したとみられ、血液と胃の内容物から、致死量を超える覚醒剤成分が検出された。
夕食時は家政婦が外出し、野崎さんと須藤容疑者は2人きり。野崎さんはその頃に覚醒剤を飲まされたとみられる。事件後、1階台所の床などから微量の覚醒剤が検出され、県警は使用時に散らばった可能性があるとみている。
ただ、専門家によると、遺体と床から検出された覚醒剤が同一だと証明するのは難しい。昭和大薬学部の沼澤聡教授(毒性学)は「通常、物質の同一性を判断するには、結晶に混ざっている不純物を比較する。しかし、国内で流通する覚醒剤は不純物が少ない上、体内に入って結晶が溶けると他の不純物と混ざり、同一性の証明はほぼ不可能だ」と指摘する。
覚醒剤が使われた事件は過去にもあった。警視庁は19年、東京都内の自宅で女性に覚醒剤を飲ませ、急性覚醒剤中毒で死亡させたとして、殺人などの疑いで税理士を逮捕。しかし、東京地検は「殺意は認められなかった」として傷害致死罪などで起訴した。
大阪府警は11年、東大阪市内のホテルで女性に覚醒剤を投与するなどして殺害したとして、無職男性を殺人容疑で逮捕。大阪地検は「殺意を問うに足る証拠がなかった」として重過失致死罪などで起訴した。
和歌山県警は須藤容疑者が事件前、インターネットで殺害方法などを検索していた形跡などから殺意を立証するものとみられるが、殺害に直接結びつく証拠が乏しい中、困難も予想される。
捜査関係者によると、須藤容疑者は逮捕前の任意の事情聴取に「身に覚えがない」などと関与を否定。4月28日の逮捕後は淡々とした様子だという。和歌山地裁は30日、須藤容疑者の勾留を許可した。期間は5月9日までの10日間。【山田毅】
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