北朝鮮体育省は6日、ウェブサイト「朝鮮体育」を通じ、同国オリンピック委員会が3月25日に開いた21年総会で、東京オリンピック(五輪)への不参加を決めたことを明らかにした。世界的に流行する新型コロナウイルス感染症から選手を保護するためとしている。今回の東京五輪に参加しないと表明した国は初めて。日本政府は確認を急ぐ。このタイミングでの不参加表明は日朝関係の冷え込みも背景にありそうだ。

医療体制が脆弱(ぜいじゃく)な北朝鮮は新型コロナを極度に警戒し、中国で感染が拡大した昨年1月末から国境を封鎖。国内に感染者はいないとする一方、非常防疫体制を維持し、自国民の海外からの帰国さえ認めず、往来を遮断している。東京での新規感染が収まらない中、北朝鮮が選手団を派遣する可能性は低いとの見方が広まっていた。他国への波及を含めて今後の影響も懸念される。

ウェブサイトの文書は5日付。丸川珠代五輪相は6日の記者会見で「詳細を確認している」と述べた。総会は平壌で、テレビ会議方式で開かれ、金日国(キム・イルグク)体育相らが参加した。北朝鮮メディアは開催翌日、昨年の活動総括と今年の活動方針を討議したと報じたが、東京五輪には言及していなかった。

菅義偉首相は北朝鮮による日本人拉致問題を政権の最重要課題と位置付け、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記と「直接向き合う」と安倍政権の路線を継承。日朝対話が断絶する中、東京五輪の機会を通じた北朝鮮側との接触も視野に入れていたが、困難になった。加藤勝信官房長官は6日の会見で「日本政府が主体的に取り組み、直接話す用意もあるという姿勢は何ら変わらない」と述べた。

北朝鮮は18年2月の韓国平昌冬季五輪に電撃的に参加し、南北融和を演出した。金正恩氏は同年3月、平壌で国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長と会談。北朝鮮側は東京五輪や22年北京冬季五輪に「必ず参加する」と表明、金正恩氏も参加を全面的に支持すると述べていた。(共同)