東京五輪で金メダルを目指す侍ジャパンは2日、決勝トーナメント初戦となる準々決勝の米国戦に臨む。先発はチームで唯一、08年の北京五輪に出場した経験のある田中将大投手(32)。メダルを逃して4位に終わった屈辱を晴らすための13年ぶりの五輪マウンドは、今大会最初で最後の登板となる可能性もある。先を見ることなく一戦入魂で、難敵から白星をもぎ取る。
最終調整を終えた田中将の表情は険しかった。それが思いの強さを物語っていた。「楽しみなんてない。国を背負って戦うので」。心境をそう表現した右腕は「グラウンドで結果を出さないと、選ばれた意味がない。明日はそのチャンス。しっかりチャンスをものにしたい」と続けた。
1次リーグ2試合の先発は若い山本、森下に譲った。勝敗次第で1日か2日か日程が直前まで不透明な3戦目の先発。日米通算181勝の経験も買われた。敗者復活も含む変則的なトーナメントで決勝は7日。2日から中4日という間隔を考えると最初で最後の先発で、登板自体も最後の可能性がある。相手は昨年まで7年間所属したヤンキースの元同僚もいて、近年の国際大会で2連敗中の米国。「どのゲームも勝つことが目標。その後のことは結果が出た後に考えればいい。先を考えずその日のベストを尽くして最後まで戦い続ける」と力を込める。
メジャーから8年ぶりに日本球界に復帰したことで出場できた東京五輪。「いろんなことが特殊な中でやっている。制限、無観客の中、どの国も同じ条件下でやっている」と言う。コロナ禍でお祭りムードはない。スタンドにファンはいない。そんな状況下でも日本はメダルラッシュ。信じたい。アスリートの5年分の笑顔や涙が少しでも勇気を与えていると。「スポーツのパワーというか、そういうものは感じています」。次は自分の番だ。
3日が稲葉監督の49歳の誕生日であることを伝え聞いた田中将は「いいプレゼントを贈ることができれば」と初めて表情を崩した。13年前に出場した北京五輪は4位。稲葉監督も「北京の悔しさを知る唯一の同志」と絶対的な信頼を寄せている。五輪の屈辱は五輪でしか晴らせない。まずは米国を撃破し、忘れ物を取りにいく。(後藤 茂樹)
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