東京都の多摩地域を中心とする複数の高校や中学で、男女を問わず新入生の制服が届かないトラブルが相次いでいることが6日分かった。いずれも衣料品販売「ムサシノ商店」(武蔵野市)が受注している。都教育委員会によると、都立高校はすべて7日に入学式を予定する。多摩地域の市立中学の多くも同日に入学式を開く。
◆私服参加容認や写真撮影延期の指示
都教委によると、都立高校や特別支援学校などの約4分の1にあたる68校が同社と契約。学校には保護者から「制服が届かない」「どうしたらいいか」と問い合わせが寄せられている。ムサシノ商店は学校に対し「メーカーから納品が遅れている。新型コロナの影響で生産量を増やせないようだ」と説明しているという。ホームページに「新入生の納品に向けて急ぎ作業を進めております」とのおわびを掲載している。
民間信用調査会社・東京商工リサーチによると、ムサシノ商店は業務を継続しているが、問い合わせが殺到し、連絡が取りづらいという。商工リサーチの担当者は「会社側は『工場からの納入が遅れている。届いたものから消費者に渡している』と説明している」と打ち明けた。
商工リサーチの調査では、ムサシノ商店は1944年創業で、多摩地区に6店舗(吉祥寺、立川、西八王子、町田、多摩、東久留米の各店)を展開。制服販売の指定校は国公立、私立の中学、高校など計約320校に上る。
制服が届かない生徒のため、都教委は6日、中学の制服や私服での登校を認めることや、集合写真の撮影を延期することなどの配慮を各学校に指示した。
武蔵野市のムサシノ商店では、出入りしていた従業員が「上の者がいないので対応できない」と言葉少なに話した。
◆店舗前には保護者が列
東京都多摩地域の高校や中学で新入生の制服が届かないトラブルが明らかになった6日、制服を受注した「ムサシノ商店」(東京都武蔵野市)が展開する店舗「ムサシノ学生服」の前では、保護者らが列をつくり、入学式直前の受け取りとなったことへの憤りを口にした。交流サイト(SNS)上では「あす(7日)入学式なのに届かない」とのコメントもあった。
ムサシノ学生服吉祥寺店(同市)には、夜になっても制服を注文した親子が訪れた。娘が中学の入学式を迎える西東京市の母親(44)は「店舗になかなか電話がつながらなかった。遅くなるなら事前に学校などに連絡があってもよかったのに」と顔をしかめた。制服は6日に届いたが、寸法が大き過ぎて直しに来たという。
八王子市の西八王子店前。都立高校に進学する娘の母親(37)は「電話がつながらなくて4日にも来た。『届いたら連絡する』と言われたが、連絡はなかった」と不信感をあらわにした。日野市の40代女性は「他の店舗で申し込んだが、西八王子店に倉庫があると聞いたので来た」。娘の制服は倉庫にあり、その場で受け取れた。「あるなら連絡してくれてもいいのに」と話した。
各自治体の教育委員会や学校も対応に追われた。府中市では中学4校で計6人の生徒に制服が届かず、市教委は学校でリユースの制服を貸し出すことを決めた。多摩市教委も数校から連絡があり、中学1年の保護者に向けて「制服が届かなければ私服で参加を。リユースの制服希望者は学校に問い合わせを」と送信した。立川市は私服での参加も可能にした。武蔵野市教委によると、6日昼時点で制服が手元にない新入生は9人いたが、その後3人に届き、残る6人はリサイクル制服を着るという。(花井勝規、宮本隆康、加藤益丈、布施谷航、佐々木香理)
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