沖縄県は15日、1972年の本土復帰から50年を迎えた。この半世紀で観光が主力産業に成長した一方、さらなる発展を妨げているのは今なお本島面積の15%を占める米軍施設だ。沖縄経済は基地に大きく依存しているというイメージが付きまとうが、軍用地料などの基地関連収入が県民総所得に占める割合は5%前後。軍用跡地の開発が大きな経済効果をもたらしているのが現実で、基地依存は過去のものになっている。(山口哲人)
◆知事「基地は振興の阻害要因」
玉城デニー知事は13日、日本記者クラブの会見で「基地が無くなると沖縄経済は立ち行かなくなるとの意見があるが、基地は沖縄振興を凍結させる最大の阻害要因だ」と訴え、「跡地利用で雇用や経済に何十倍という非常に高い効果が実現している」と強調した。
日本は太平洋戦争後、52年のサンフランシスコ講和条約発効で主権を回復したが、本土から切り離された沖縄は米軍の施政権下に置かれた。「銃剣とブルドーザー」と呼ばれる米軍の土地強制接収で住宅や農地が奪われ、多くの住民は基地の建設作業員や従業員など関連産業に頼らざるを得なかった。65年には基地関連収入が県民総所得の30.4%を占めていた。
72年に本土復帰し、立ち遅れていた産業や生活の基盤が整備され、振興が進むにつれて米軍に依存した経済構造から脱却。ここ30年の基地関連収入は5%前後で、米軍が経済に及ぼす影響は限定的だ。
◆米軍「2番目の雇用主」と地域貢献アピール
それでも米軍側は、在沖縄米軍が年間約2500億円の経済効果をもたらしていると指摘。県民約9000人が基地関連で働いていて「県庁に次ぐ2番目に大きな雇用主だ」(米海兵隊)と地域貢献をアピールする。
一方、県は普天間飛行場(宜野湾市)を含む五基地・施設の返還が実現すれば、米軍の主張の3倍を超える8900億円の経済効果が得られると試算。雇用者数も約8万人へと膨らむとして、基地削減を求める。
県の試算は、既に返還された軍用地の開発実績に裏付けられている。北谷町の米軍射撃場跡地周辺は人気スポットの「美浜アメリカンビレッジ」に生まれ変わり、那覇市の米軍住宅跡地には商業施設やマンションなどが建ち並び、新都心としてにぎわう。これらの軍用跡地の開発で、小売りやサービス業の売上高などによる年間の直接経済効果は返還前の28倍、雇用者数も72倍に増加した。
◆官房長官、返還の効果認めるも…
松野博一官房長官は13日の会見で「返還跡地は観光資源や商業施設、幹線道路など沖縄の発展に大いに寄与するものとして活用されている」と語ったが、普天間などの返還のめどは立っていない。
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