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Wednesday, February 26, 2020

【インクルーシブ教育最前線】小学5年生の決断 支援級から一般級へ - 時事通信

交流重ねる

 

 「あっ、コンパス忘れた。取ってくる」

 拓己君が、慌てて教室を飛び出して行った。2019年11月下旬、横浜市立飯島小学校5年生の算数の授業。コンパスと分度器を使い、半径6センチの円に内接する正五角形と正六角形を描く練習問題を解いている最中だ。

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 10分近く経つが、拓己君はなかなか戻ってこない。子どもたちの間を回り、一人ずつ指導していた安島美穂子教諭(42)が、しびれを切らした。

 腰をかがめ、拓己君の机の中をごそごそと探し始めると、乱雑に詰め込まれたプリントやノートの間からコンパスが見つかった。安島先生は「もう、しょっちゅうなんですよ」と苦笑い。

 間もなく、拓己君が手ぶらで戻ってきた。「コンパス、無かった」

  ◇  ◇

 拓己君には、5年生のこの教室以外に席がもう一つある。拓己君は個別支援学級(特別支援学級)に在籍しながら、一般学級に「交流」に来て学んでいる。

 飯島小は全学年とも一般級が3クラスあり、学年縦割りの支援級を「4組」と呼ぶ。知的障害や発達障害のある32人が学んでいる。

 拓己君が飛び出して行った先は、現在在籍し、ランドセルや学習道具を置いてある4組の教室だ。4組の自席にコンパスを忘れてきたと思ったのだ。

 同小の尾上伸一校長(60)は、交流に力を入れている。支援級が閉ざされた空間にならないようにするためだ。

 集団が苦手な子どもたちが多い中、少しずつ交流の機会を増やすことで、少人数の支援級では難しい社会的な成長を促す狙いだ。尾上校長は「受け入れる一般級の子どもたちにとっても、支援級の子と関わることで、寛容性や優しさ、人権感覚を育てたい」と話す。

 拓己君も交流で一般級に来ている一人だ。2年生から段階を踏み、各教科の基礎となる国語と算数については4年生まで支援級で学んだ。5年生になった19年度は、授業は全て、給食や係活動などの時間も一般級で過ごしている。

 「拓己は手帳が取れないから」

 尾上校長は顔を曇らせる。知的障害児・者が持てる療育手帳のことだ。母親の理彩さん(41)によると、拓己君は幼稚園に通っている時に、発達障害の一種である自閉症スペクトラムと診断された。

 発達障害の子も持てる精神障害者保健福祉手帳は取得したが、知的には問題がないため、療育手帳は持てない。療育手帳があれば、義務教育である小中学校を卒業後、特別支援学校の高等部、福祉的就労へと進む道もある。

 しかし、療育手帳を持っていない拓己君が、このまま中学でも支援級に進学した場合、将来の選択肢は狭まる。支援級は文章による評価となるため、多くの高校の入試に必要な内申点につなげることが難しいからだ。

 文部科学省の調査によると、中学生全体の高校進学率は9割を超えているのに、支援級からは、約3割にとどまる。

 だから、拓己君は中学段階で一般級に進学することを視野に交流を重ね、6年生からは一般級への転籍を選んだ。今はその準備のための最終段階と言える。これが、尾上校長が交流に力を入れるもう一つの理由だ。

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