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Saturday, May 2, 2020

末続慎吾から高校生へ「総体中止に絶望、それは君が真剣だったから」 - 読売新聞

 新型コロナウイルス感染拡大を受け、今夏の全国高校総体(インターハイ)が中止となった。多くの高校生が大きな目標を失い、大学への推薦入学など進路を決める上で重要な大会の中止に不安を抱える。北京五輪陸上男子400メートルリレー銀メダルの末続慎吾(39)(イーグルラン)が、そんな高校生たちへ向けたメッセージを読売新聞に寄稿した。

    ◇

 高校生の君へ。

 全国高校総体が中止となった。僕らスポーツに携わり人生を歩んできた人間にとって、高校総体はいわば「大学受験」みたいなものだった。高校総体を通して、これから先のことも考えていた高校生は、不安でいっぱいではないか。

 だからこそ、今の君たちに伝えたいことがある。

 僕にとって高校総体は、必ずしも輝かしいものではなかった。1年は200メートルで予選敗退、2年は200メートルで8位。3年では大会約1か月前に体育の授業で足を18針縫う大けがをして、100メートルで8位、200メートルは走りきれず予選敗退。語り継がれるほどの実績ではない。ただ、今思えばそれも幸せなことだった。

 その後も陸上を続け、日本、アジアで一番になった。そして五輪、世界選手権でメダルを取った。僕はスポーツ選手が持つ夢をかなえた。

 でも、同時に夢そのものも失った。叶えてしまったのだから。僕は勝つことだけを、メダルを目指した。勝利やメダルという「結果」が夢だった。でも、その夢を叶えた後、どうしても幸せを感じられなかった。

 そして僕が知ったのは、大切なのは夢を叶えたかどうかではないということ。一番大切なのは、「どれだけ真剣にできたか」ということだと知った。

 突然、目の前から夢や目標がなくなった時、君は何を思っただろうか? 真剣であればあったほど、絶望や虚無感を覚えただろう。でも、これだけは言える。それは君が本当に真剣だったからだ。絶望を目の前にした今は、本当は君たちにとって一番大切なことを知る時間でもある。

 高校総体は中止でも、それだけで人生は終わらないし、全ての答えになることも絶対にない。今できることを真剣にしていれば、その誠実さを見て、過程を見て、導いてくれる大人は必ずいる。少なくとも僕はそういう大人に何度も救われ、これまで走ってこられた。

 だからこそ、今は真剣さを失うな。そして、あきらめるな。

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May 02, 2020 at 10:24PM
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