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Saturday, August 1, 2020

映画、小説、演劇で活躍する才人の野望は? 「君が世界のはじまり」のふくだももこ監督 - 時事通信ニュース

2020年08月02日12時00分

「演出するたびに課題が見つかる。他の監督さんの現場に行って勉強したい。昔の撮影所システムがものすごくうらやましい」と言うふくだももこ監督=東京都内

「演出するたびに課題が見つかる。他の監督さんの現場に行って勉強したい。昔の撮影所システムがものすごくうらやましい」と言うふくだももこ監督=東京都内

 映像作品の監督、作家、さらには舞台演出家の顔も持つ才人だ。ふくだももこは「何かのテーマを表現したいと思ったときに、アウトプットの方法が今のところ三つある。どれを使えばいいのかを考えるのが楽しい。恵まれた状況ですよね」と笑顔で語る。

 最新作は長編劇場用映画の第2作となる「君が世界のはじまり」。すばる文学賞の佳作に輝いた自身の小説「えん」などをベースにした青春群像劇は、「今はキラキラムービーが落ち着いて、青春映画は新たな局面にある」と言うふくだの思いが結実し、登場人物のリアルな息遣いが伝わる人間ドラマとなった。

 物語は「えん」をベースに、その後に執筆した「ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら」の内容を加えて構成した(脚本は向井康介)。大阪の片隅にある町を舞台に、「えん」のニックネームで呼ばれる縁(ゆかり=松本穂香)と彼女の親友の琴子(中田青渚)、二人と同じ高校に通う生徒(片山友希、金子大地、甲斐翔真、小室ぺい)の日常をつづる。

 彼らはそれぞれに心に闇や悩みを抱え、中には家族との関係もままならない者もいる。「えん」は映画監督への道を諦めかけた時期に「どうすることもできなかった高校時代の自分を救ってやろうみたいな気持ちで書いた」作品といい、今作も「悩める少年少女たちに見てほしい」と言う。

 映像化に際しては、大好きな相米慎二監督の「台風クラブ」のような「ちょっと不穏な空気が流れていて、若い子たちが何をしでかすか分からない緊張感のある青春映画」を意識した。映画の冒頭で起こる“ある事件”は脚本の向井が新たに加えた趣向だが、ふくだは「自分が想像もしなかった軸だったのでめちゃくちゃ面白かった」。このアレンジは原作に内在する青春の不穏さをさらに際立たせ、映画独自の魅力を生み出すことにつながった。

 えん役の松本をはじめ、次代を担う若手のフレッシュな演技が全編を引っ張る。「役者がその人自身の人生を体現して、脚本に書かれた文字以上のことを、奥行きを持って演じてくれた」。演技者の青春も映し出すような瑞々(みずみず)しい映像が魅力的だが、8月に29歳となるふくだ監督自身も「年齢を重ねるにつれてどんどん自分からこぼれ落ちていく感情」を作品に込められたと満足げ。「20代のうちにこの作品に出合えてよかったと思います」

◇人を通して社会を描きたい

 映画好きの父親の影響で、映画の世界に興味を持った。日本映画学校で学んだ後、文化庁委託の若手映画作家育成プロジェクトに選ばれ、短編「父の結婚」を発表。同作をセルフリメイクした2019年の「おいしい家族」で長編映画デビューした。小説家としてはこれまで3本の短編などを執筆し、今年2月には「夜だけがともだち」で舞台演出にも進出。このほか、テレビドラマの演出も手掛けるなど、八面六臂(ろっぴ)の活躍ぶりだ。

 監督業や執筆業を「自分が何を考えているかを消化する作業」と考えている。一方で、25歳を過ぎたころから、映画を撮る目的が「自分のため」から、「誰かに届ける」に変化してきたという。「周囲からは若いと言われるが、私は自分がすでに新しい世代ではないと思っている。次の世代のために何ができるか?という意識が生まれ始めた」

 そんな思いは、現在の映画界が抱える問題点に目を向けるきっかけにもなった。ふくだ監督が今必要だと考えるのが、撮影現場での「保育部」の設置。優秀な技術や経験がありながら、子供が生まれたことで現場からの離脱を余儀なくされる女性スタッフを目にして、その必要性を痛感しているという。「子供が現場にいられる環境をつくることでスタッフが辞めないで済むのなら、それを当たり前にしたい」

 このほかにも、演技の基本を指導する場所がなく発声すらまともにできない俳優が現場に送り込まれる状況や、知名度優先で実力は度外視されるキャスティングの在り方など、ふくだ監督は現在の映画界の問題点を指摘する。映画界と演劇界の人的交流が活発化しない現状への不満も感じており、両者をつなぐパイプになりたいとの思いも生まれているという。

 今後も今作のような「人を通して社会を描く」作品を作り続けるつもりだ。ドラマの演出や新作小説の執筆など予定は目白押しで、同じ題材を演劇と映画で見せるなど、多ジャンルで活動する自分ならではの表現にも挑戦したいという。

 最後に「30歳までにやっておきたいことは?」と尋ねると、「めちゃでかい願望ですけど、芥川賞を取りたい」との答えが返ってきた。近い将来、芥川賞受賞作の作者自身による映画化という快挙が実現することを期待したい。

 「君が世界のはじまり」は7月31日公開。(時事通信社編集委員・小菅昭彦、撮影・入江明廣)

 ふくだももこ=1991年8月4日生まれ、大阪府出身。このほかの監督作に、オムニバス映画「21世紀の女の子」の「セフレとセックスレス」、ドラマ「深夜のダメ恋図鑑」など。小説家としては短編に加え、監督・脚本を担当した「おいしい家族」のノベライズも発表している。

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