岸田文雄首相は28日、佐渡金山遺跡(新潟県佐渡市)の世界文化遺産登録を目指し、ユネスコに推薦する考えを表明した。当初は見送りを検討していたが、自民党内から突き上げを食らい、方針転換した。韓国側の反発は必至で、本来の目的である世界遺産登録に向けた道筋は描けていない。
「申請を行うことを決定した。変わったとか転換したとの指摘は当たらない」
28日夜、首相は記者団に強調した。だが、実際は悩み続けた末の決断だった。
佐渡金山遺跡が2023年の世界文化遺産登録を目指す国内候補に選ばれたのは昨年12月末。地元の歓迎の声とは裏腹に、外務省を中心にユネスコへの推薦に慎重な声が多数を占めた。
戦時中、佐渡の鉱山で朝鮮半島出身者が働いていたとして、韓国政府は「強制労働被害の現場だ」と撤回を要求。韓国は、15年に世界文化遺産に登録された長崎県の端島炭鉱(軍艦島)などからなる「明治日本の産業革命遺産」にも言及。朝鮮半島などから連行され労働を強いられた人々についての説明が不十分だとして、「日本は約束した後続措置を履行していない」と批判した。
推薦すれば韓国側の反発は避けられない。韓国の批判が佐渡金山だけでなく、すでに登録されている軍艦島にまで波及しかねないという懸念があった。
悩みは韓国だけでない。「米国はどう思うのか」。首相の脳裏には、21日にオンラインで初会談したバイデン米大統領の存在もあった。同盟国の連携で中国に対峙(たいじ)したい米国にとって、日韓関係がさらに悪化することは都合が悪い。
また、ユネスコは昨年、歴史的な資料を後世に引き継ぐことをめざす「世界の記憶」(旧記憶遺産)で、当事国が反対すれば登録されない制度を、日本政府の働きかけで導入したばかり。世界遺産とは違う制度とはいえ、韓国が反対する中で日本が推薦することは、矛盾する行為となる。
確実に登録できるチャンスを探るべきだとの外務省の主張を受け、首相は国会答弁で「登録を実現することは何よりも大事。何が最も効果的なのか、しっかり検討していきたい」と繰り返し、推薦見送りを軸に調整を進めた。
「保守層の溜飲が下がっても…」関係者の懸念
ところが、首相の対応に、自民党内から反発の声があがった。安倍晋三元首相が顧問を務める議員連盟「保守団結の会」は18日、速やかな推薦を政府に求める決議をまとめた。19日には高市早苗政調会長が、記者会見で「日本国の名誉に関わる問題だ」と主張。官邸幹部は「いろんな所から声が入ってきた。あと何プッシュかすれば覆るかもしれない」と話した。
20日、安倍氏が自らの派閥で「論戦を避ける形で登録を申請しないというのは間違っている」と語った。推薦を見送れば、党内の安倍氏に近い議員らが首相を見放しかねないとのメッセージだった。今夏の参院選を控え、首相は「何か工夫を考えないと」と漏らすようになった。
首相が安倍氏に電話をかける…
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