天皇陛下が21日に臨まれた62歳の誕生日にあたっての記者会見の全文は次の通り。
この1年は、新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、東京オリンピック・パラリンピックのほか、皇室では御所へのご移居や上皇さまの米寿のお誕生日など様々な出来事がありました。印象に残った出来事についてお聞かせください。国民と直接ふれあう機会が限られる状況の中、オンラインで各地を訪問された感想や、今後「ウィズコロナ」や「ポストコロナ」での活動のあり方についてもお考えをお聞かせください。
この1年も、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るいました。亡くなられた方々に深く哀悼の意を表しますとともに、家族、友人など大切な方を亡くされた多くの方に、心からお見舞いを申し上げます。感染症の影響により、仕事を失ったり、苦しい生活状況に陥る人、孤立を深める人も多く、心が痛みます。医療従事者の皆さんは、自らの感染の脅威にさらされながら、強い使命感を持って、昼夜を問わず、最前線で患者さんの命を救うための尽力をされています。また、
昨年は東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開かれました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大という困難な状況の中での開催となりましたが、大会を無事に終えることを可能にした運営スタッフ、ボランティア、医療従事者、警備担当者など多くの関係者の尽力に敬意を表したいと思います。私たちもそうでしたが、参加した選手一人一人が力を尽くして競技に臨む姿から、新たな希望と勇気を見いだされた方も少なくなかったのではないかと思います。また、参加国の選手同士がお互いの健闘をたたえ合う姿や、例えば、女子バスケットボールの表彰式の後で、日米仏3か国の選手全員が自然に入り交じって記念撮影に臨む姿など、国境を越えた選手同士の交流が各所で見られたことにも感慨を覚えました。この度の北京での冬季オリンピックでも選手同士の心温まる交流を目にしましたが、そのような光景を見ながら、私は、50年前の札幌冬季オリンピックでの、70メートル級スキージャンプで金メダルを取った
昨年も、現在人類が直面する最大の課題の一つとして、気候変動問題に関心が集まりました。その解決に向けては、国・企業・研究機関・一般の人々など幅広い関係者が手を携えて脱炭素社会の実現に取り組まなければなりません。そのことは、時として、乗り越え難い壁のようにも見えますが、近年においても我々はこのような課題に挑戦してきました。例えば、平成初期には、地表に降り注ぐ紫外線を増加させる「オゾン層の破壊」が地球環境問題として真っ先に挙げられる課題でしたが、数十年に及ぶ国際的な連携・協力やその下でのフロン回収技術等の企業の技術革新、消費者の理解と協力などにより、早い地域では2030年代にはオゾン層が1980年の水準にまで回復する、との見通しを国連の専門機関が示すほど状況が改善していると聞きます。このオゾン層の回復は、地球規模で対策に臨んだ環境問題の改善の好事例として、気候変動対策に向けた努力が始まりつつある中で勇気を与えてくれるものです。そのような中で、昨年、
東日本大震災の発生から間もなく11年を迎えます。この震災により、2万人を超える数多くの方が亡くなったり、行方不明になったりしたことは、今思い出しても深く心が痛みます。その後の復興の過程で、人々の生活や産業を支える社会基盤の整備等は進んだものの、精神的なサポートを必要とする人が近年になってむしろ増えていると伺うなど、本当の意味での復興はまだ道半ばにあるものと思います。私は、雅子と共に、引き続き被災地に心を寄せていくつもりです。思い返せば、東日本大震災直後には、現地に駆けつけたボランティアに多くの被災者が勇気付けられたものと思います。海外の多くの国々からも支援物資等が届けられ、ボランティアが被災地に駆けつけてくれました。先月の海底火山の噴火による被害が伝えられるトンガの皆さんからも、その時、様々な支援を頂いたことは記憶に新しいところです。その時の感謝の気持ちは今なお色あせるものではありません。ここに改めて、この度のトンガの噴火により被災された方々に心からのお見舞いをお伝えいたします。東日本大震災の発生と同じ平成23年、トルコで起きた震災に日本から支援活動のために赴いていた宮崎淳さんが、余震により残念ながら現地で亡くなりました。舗装道路などのインフラも十分でない被災地において、見ず知らずのトルコの人々のために力を尽くし、亡くなったとして、当時のギュル大統領は、トルコ国民の心を動かす献身的な活動をした宮崎さんをいつまでも忘れない、と上皇陛下に親書を送られました。そして、以後、トルコの各地で宮崎さんの名を冠した公園や学校が開設されているとの報道に昨年接したことも、トルコの人々の温かい気持ちと共に印象に残りました。災害により困難な状況に陥った人々を助けようと尽力する災害ボランティアの精神は誠に尊いものです。日本の多くの人々が国内外で災害ボランティア活動に従事してくれていることに敬意を表したいと思います。我が国では、今後、いくつかの大きな地震の発生が予測されています。また、近年、大きな被害をもたらす豪雨災害等が頻発しており、気候変動の影響により、今後、気象災害のリスクは一層高まる恐れがあると言われており、発災時に多くの人が助けを必要とする場面はより多くなると予想されます。そのため、私たち一人一人が防災や減災の意識を高め、災害に対して自らの備えをするとともに、どこかで災害が起きたときには、一人一人が、自らのできる範囲で被災した人々に寄り添い、その助けとなるべく行動できるような社会であってほしいと願います。
新型コロナウイルス感染症の影響により、国民の皆さんと広く直接触れ合うことが難しくなっていることを、私も雅子も残念に思っています。それでも、オンラインにより昨年3月、4月に東日本大震災被災3県を訪問して行った復興状況の視察を始め、全国各地をオンラインで訪問することにより、現地の方々のお話を伺い、交流することができたことは私たちにとって意義深くありがたいことでした。例えば、5月の「こどもの日」にちなみ、熊本県の阿蘇山の麓にある高森町と、鹿児島県の離島である三島村の学校を半日のうちに続けて訪問し、それぞれ特色のある地域の子供たちと交流できたことや、第5回国連水と災害に関する特別会合に各国の研究者と一緒にオンラインで参加できたことは、オンラインの活用が、感染症対策としての利点だけではなく、例えば複数の場所にいる人々に同時に会うことができたり、離島や中山間地域など、通常では訪問がなかなか容易にできない地域の人々とも比較的容易に、しかも臨場感を持って交流することができるという利点と可能性があることを改めて実感させてくれるものでした。様々な場所を実際に訪れ、現地で多くの人々と直接お話をしたり、同じ体験を共有したりしながら、その土地、その土地の雰囲気を肌で感じるなど、実際の訪問でなければ成し得ない部分はあるものの、感染が収束しない現状では、オンラインは、国民の皆さんや世界の人々と私たちを結ぶ上で、有効な手段と考えられます。オンラインなりの課題もあるかもしれませんが、状況に応じた形で、引き続き活用することができればと思っています。また、感染収束後も、オンラインを活用することが適当な場合には、その活用も視野に入れていきたいと思います。新型コロナウイルス感染症の影響により、現在は様々な形の交流が難しく、
上皇陛下には昨年暮れに米寿を迎えられ、上皇后陛下には今年米寿を迎えられることを喜ばしく思います。昨年12月と今年の元日に、久しぶりに両陛下に私たち2人そろってお会いできたことをうれしく思っております。また、日頃より、私たちや愛子を温かくお見守りいただいておりますことをありがたく思っております。両陛下には、新型コロナウイルス感染症の感染拡大にお心を痛められつつ、日々を送っておられることと拝察いたします。これからも、お体を大切に、末永くお健やかにお過ごしいただきますよう心よりお祈り申し上げます。
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