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Saturday, April 9, 2022

地下室育ち 純白の東京ウド シャキシャキ食感に春の香り - 産経ニュース

出荷を待つウドを手にする島崎敏明さん=5日、東京都国分寺市(酒巻俊介撮影)
出荷を待つウドを手にする島崎敏明さん=5日、東京都国分寺市(酒巻俊介撮影)

春に旬を迎えるウド。実は数少ない日本原産の山菜として平安時代から親しまれてきたといわれ、日本人にはなじみ深い食材だ。中でも東京は古くからの生産地として知られ、「東京ウド」は贈答用としても人気が高いという。爽やかな香りにいざなわれ、生産現場にお邪魔した。(竹之内秀介)

JR国立駅(東京都国立市)から車で約10分。住宅ばかりの車窓の景色に徐々に緑が増えていき、さらに進むと、「東京うど」と書かれた看板が視界に入った。

「話の前に、まずは生で食べてみてください」

取材に応じてくれた国分寺市の農家、島崎敏明さん(58)は、あいさつもそこそこに記者と同行したカメラマンに純白色のウドを手渡した。穂先をかじると、シャキシャキとした食感の後に、ウド特有の香りが口の中に広がる。

「みそマヨを付けて野菜スティックみたいにかじったり、みそ汁に入れたり、手間をかけずとも手軽に食べられるんです」と島崎さん。

山に自生しているものは「山ウド」と呼ばれ、穂先から茎まで緑色だが、栽培技術の改良や優良品種の選択が進んだことで、色が白くやわらかい東京ウドが生まれた。育成方法の最大の特徴は、「室(むろ)」と呼ばれる地下室で育てる点だ。

室(むろ)の暗さが、優しい味わいを育てる(酒巻俊介撮影)
室(むろ)の暗さが、優しい味わいを育てる(酒巻俊介撮影)

まず種株を群馬県などの高冷地で育てて、掘り起こしたものを12月ごろに東京の農園にある室に運び入れて発芽させる。室の中は光や風が当たらないため、山ウドと比べて、アクの少ない優しい味わいに仕上がるという。

島崎さんの農園には、かつてサツマイモの貯蔵庫だったという深さ5メートルほどの室が2つあり、ここで年間1万本以上を生産している。

だが近年は、食の多様化による消費の落ち込みや育成作業の複雑さから、全国的に生産農家が減少。かつて国分寺市内にはウド農家が100軒近くあったが、現在、地元の農協に登録しているのは、わずか7軒しかない。

島崎さんは「ウドの食べ方さえ知らない人が増えてきたのは残念。確かに狭い室で作業するのは手間もかかるが、貴重な日本原産の山菜であり、その上品な風味は特有のもの。何とか残してやりたい」と語る。

ご当地グルメに

中華料理店「五十番」で提供している「うどピリ辛ラーメン」(竹之内秀介撮影)
中華料理店「五十番」で提供している「うどピリ辛ラーメン」(竹之内秀介撮影)

消費喚起のため、自治体や生産者組合がウドのレシピを冊子にして配布するなど地道に取り組んでいる一方で、ウドを使った料理で注目を集めている飲食店もある。

同じ多摩地域の立川市にある中華料理店「五十番」のメニュー表を開くと、まるまる1ページがウド料理に割かれている。ウドを使ったラーメンに炒め物、サラダ、天ぷら…。

同店代表の高橋昌裕さん(55)によると、同市でウドの生産が盛んだったことがきっかけで、地元農家からウド料理を考案してほしいという申し出があり、一連のウド料理が生まれたという。

短冊状に切ったウドを辛く味付けし、こんもりと盛った「うどピリ辛ラーメン」(850円)は辛党の間で人気だそう。ラーメンとウド、意外な組み合わせだが、ウドの食感とスープのだしがマッチしており、一気にすすってしまった。

高橋さんはウドについて、「生で食べても火を通してもさまざまなアレンジができる、料理人にとって面白い食材。気軽に食べてもらい、ウドに触れるきっかけになれば」と笑顔で話した。

実は奥深いウドの世界。この機に日本が誇る春ならではの食文化に触れてみてはいかが。

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