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Tuesday, September 5, 2023

ソニーの「におい提示装置」好きな香りをカスタム可能 - 家電 Watch

「におい提示装置 NOS-DX1000」と「カスタムカートリッジ NOS-CK10」

ソニーは、ニオイに関連した研究や測定を行なうための「におい提示装置 NOS-DX1000」の関連商品として、最大40種の嗅素をユーザー自ら注入可能な「カスタムカートリッジ NOS-CK10」を、12月に発売する。価格はオープンプライス。想定価格は17万円前後。

「カスタムカートリッジ NOS-CK10」

3月に発売された「におい提示装置 NOS-DX1000」は、異なるニオイを手軽に提示できる装置。

あらかじめ最大40種類の嗅素(ニオイの素)が注入されたカートリッジをセットし、装置に鼻を近づけると、専用アプリで指定したニオイが発せられる。多数ある嗅素を混在させず、均一に提示可能なところがポイント。

新たに「カスタムカートリッジ NOS-CK10」が提供されることで、今後は、ユーザーが任意の嗅素成分をカートリッジに注入できるようになる。これにより、ユーザーは自分自身のニーズに合わせて、発生させるニオイをカスタマイズできる。

例えば、食品会社が自社の製品の品質管理に使用したり、香水メーカーが新しい香りを評価するのに役立てるなど、事業者ごとにカスタマイズ可能になる。

ユーザーが、それぞれのニーズに合わせて、嗅素成分をカートリッジに注入できる

「におい提示装置 NOS-DX1000」は、本体のほか、Bluetooth接続するタブレットと、専用アプリ「Scent Canvas」で構成される。

実際にカートリッジがセットされた「におい提示装置 NOS-DX1000」を使ってみた。本体の前に座り、アプリに表示されている様々なフルーツなどのイラストの中から嗅ぎたいものをタップし、本体のノーズガイドに鼻を近づける。

例えばレモンのイラストをタップしてみると、約3秒後に本体からシューっという音が聞こえて、レモンの香りが広がる。すぐに紅茶のイラストをタップすると、また3秒後にはストレートティーの香りが漂ってくる。

同機のポイントの1つは、この3秒ごとに異なるニオイを提示できること。

一般的に、研究機関などでニオイを嗅ぐといった官能検査を行なう際には、正確にニオイを嗅ぎ分けられるよう、特殊な環境を整えるという。一方で、「におい提示装置 NOS-DX1000」は、専用の設備や部屋の用意が不要で、様々な場所で使える。

また直前に発生させたニオイを即座に消臭して、3秒後には異なるニオイを嗅げる。さらにニオイの発生源から鼻までの距離や、ニオイを提示する時間が一定のため、測定者や被験者による条件のばらつきを抑えられるという。

検査用の特殊な環境が不要で、会議室などでも使える
本体と接続されたタブレット。専用アプリに表示されたアイコンをタップすると、約3秒後に指定されたニオイが発生する
本体のグレーの部分がノーズガイド。ここに鼻を近づけてニオイを嗅ぐ

実際のユーザーとなる事業者からすると、「におい提示装置 NOS-DX1000」や「カスタムカートリッジ NOS-CK10」は、どういった点で有用性を感じるのか。

ニオイや味の分析など、人の感覚を数値化する各種分析システムや官能評価サポートツールなどを開発している、アルファ・モス・ジャパン。その代表取締役・吉田浩一さんは、食品業界では飲料、お菓子、惣菜、調味料といった多岐にわたるカテゴリーで人の鼻を使って、ニオイのチェックが行なわれていると語る。

アルファ・モス・ジャパンの代表取締役・吉田浩一さん

「特に食品の鮮度やおいしさ、食べて良いかどうかの判断は人間の鼻に頼ることが多いです。そこで、ほんの少し異なる成分が入ってニオイが変化した時に、その変化を感じられるか、認識できるかという意味で、人の鼻の役割は大きいです」

そうした中で、「におい提示装置 NOS-DX1000」は、このニオイの評価やコミュニケーションを助けるツールとして、活躍するだろうという。

また食品業界だけではなく、ニオイが関係する分野、例えば化粧品や香水であったり、そういった製品を詰める包装材料やパッケージに関わるところでは、そのニオイを評価する人をトレーニングするのにも、活用できるだろうとも語る。

食品業界などでは、企画・開発の段階から製造や販売においてまで、人の鼻を使ってニオイをチェックしている

同様なことをアサヒグループジャパンの執行役員・伊藤義訓さんも、製品に実際に触れてみて感じたという。

「ビールの開発や製造過程でもニオイは非常に重要です。そうした開発や製造に関わる人は、様々なニオイを覚える必要があります。例えば、ビールが少し発酵するとダイアセチルという成分ができます。そのニオイを新しい技術者は当然、分かりません。その技術者に、自分が感じているこのニオイがダイアセチルだということを、覚えてもらわなきゃいけません。そこで『におい提示装置』を使えば『これがダイアセチルのニオイなんだよ』とすぐに提示でき、新しい技術者も『これがダイアセチルなのか』と理解できます」

つまり嗅素を標準化できるということ。標準化が可能になることで、技術者のトレーニング時にはもちろん、新製品の開発段階でも、マーケターや技術者との間で、コミュニケーションがスムーズになるだろうと語る。「まさにイノベーションと言える製品だ」と、伊藤さんは絶賛した。

アサヒグループジャパンの執行役員・伊藤義訓さん

「におい提示装置 NOS-DX1000」が発売されてから約半年。これまでに医療機関を中心に提供されてきた。だが、利用者が用途に合わせて、必要な嗅素を注入できるようになる「カスタムカートリッジ NOS-CK10」が12月に発売されることで、研究開発機関での利用が、さらに広がりそうだ。

なお発売までに、9月11日の「日本味と匂学会第57回大会」や、10月4日〜6日の「食品開発展」、11月26日の「一般社団法人日本官能評価学会2023年大会」などで同機が展示される。

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