日本屈指の梅の名所として知られる水戸で、2024年2月10日(土)~3月17日(日)の間「第128回水戸の梅まつり」が開催されています。屋外で抹茶を楽しむ野点(のだて)、全国梅酒まつりなど、期間中は見て楽しく味わっておいしいイベントも多数開催されます。期間中は水戸のブランド梅「ふくゆい」を使ったスイーツが揃うスポットも登場。園内の「カフェ樂」や「見晴亭」の梅スイーツもぜひ味わってみてくださいね。
日本屈指の梅の名所「偕楽園」。今年は好文亭表門から入ってみよう
第9代水戸藩主・徳川斉昭(なりあき)によって造園され、天保13年(1842)に開園した偕楽園(かいらくえん)。金沢の兼六園(けんろくえん)、岡山の後楽園(こうらくえん)と並ぶ日本三名園のひとつで、約100種・3000本の梅が咲き誇る名所として知られています。
最も華やかな東西梅林に入る最短ルートは東門ですが、偕楽園らしさを感じるなら好文亭表門(こうぶんていおもてもん)から入るのもおすすめ。最初は竹林や木立の生い茂るうっそうとした緑の中を歩くのですが、その後一気に視界が開けて目も覚めるような梅の世界に! 斉昭が演出した「陰と陽の世界」を体感するドラマチックな展開です。
名建築・好文亭でスイーツブレイク
うっそうとした孟宗竹林(もうそうちくりん)や杉林を過ぎ、中門を抜けると、好文亭です。
ここは詩歌・管弦の催しなどを、領民と共に楽しむために斉昭が造った名建築の誉高い建物。「好文」は「学問に親しめば梅が開き、学問を廃すれば梅の花が開かなかった」という故事にちなんだ梅の別名「好文木」に由来します。
昭和には空襲と落雷で2度、平成には東日本大震災で被災した好文亭ですが、そのたびごとに見事に復元されてきました。このことからも、領民と共に楽しむために殿様が作ったこの場所を、水戸市民がどれだけ大切にしてきたかがわかりますね。
好文亭内にはカフェ「樂(らく)」が2022年2月にオープン。静かな雰囲気の中で枡の中に甘味を入れた珍しい枡シリーズなどオリジナルの和スイーツが味わえます。
■カフェ「樂」(カフェらく)
住所:茨城県水戸市常磐町1-3-3
TEL:070-9040-3191
営業時間:9時30分~16時20分LO
定休日:無休
偕楽園最大の梅林「東西梅林」へ
偕楽園の梅の数は約3000本。その多くがあるのが東西梅林です。ここでは360度見渡す限りが梅。色合いや咲き方が違うものを見比べながら梅散歩を楽しみましょう。
水戸のブランド梅「ふくゆい」スイーツのセレクトショップへ
水戸市の偕楽園は梅で有名ですが、食用の梅の生産はほとんどありませんでした。そこで、観ても食べても楽しめる梅の産地を目指して梅の生産拡大に取り組み、誕生したのが水戸市産のブランド梅「ふくゆい」。園内には期間限定で特設ブースが設けられ、水戸菓子工業協同組合の有志が、3月中旬まで11店舗のふくゆいを使用したお菓子を販売しています。
特設ブースにはさまざまなふくゆいスイーツが並んでいます。たとえば……
どれもきれいでおいしそう! 目移りしてしまいますね。あなたのお気に入りを見つけておみやげにしましょう。
県内の梅スイーツが一年中揃う見晴亭
「見晴亭」は東門そばに立つ複合施設。休憩所内に茨城県全体の観光情報を発信する案内所、県の特産品販売スペースの機能も備えています。もちろん県内の梅スイーツも豊富に揃っていますから、おみやげ探しにおすすめです。
偕楽園をあとに、もう一つの梅まつり会場の藩校・弘道館(こうどうかん)に向かいましょう。東門を出たところにあるバス停・偕楽園東門・常磐神社北参道から、乗り換えなしで弘道館に行く便を茨城交通バスが運行していますから、あらかじめ時刻を調べておくとよいでしょう。
学ぶ心も匂い立つ、もう一つの梅の名所・藩校弘道館
偕楽園と並ぶ水戸のもう一つの梅の名所が弘道館。弘道館は水戸藩第9代藩主の徳川斉昭が創設した藩校です。偕楽園にあれほどの梅を植えた斉昭ですから、もちろん弘道館にもすばらしい梅があります。
水戸の歴史的人物というと、水戸黄門のドラマで名高い徳川光圀(みつくに)や、最後の将軍・徳川慶喜(よしのぶ)が思い浮かびます。斉昭が生まれたのは光圀が亡くなってからちょうど100年後の寛政12年(1800)。幕藩体制が大きく揺らぎ始めた頃でした。
『大日本史』を編纂した光圀に始まり、斉昭が完成させたのが日本伝統的な国のありかた“国体”に目を向けた「水戸学」です。内憂外患の国難を克服するための人材育成に、斉昭は力を尽くしました。その中心となったのが弘道館です。藩校としては当時の最大規模で、学問・武芸から医学・薬学・天文学まで幅広い分野の教育を行っていました。
文武修行の場だけあって、こちらの梅は偕楽園に比べて落ち着いた雰囲気。弘道館で張りつめた時を過ごしたあとは、のびやかな偕楽園で身心をリラックスさせるという斉昭の「一張一弛(いっちょういっし)」の精神が感じられます。
弘道館のスケールを感じながら梅さんぽ
今ではこぢんまりと感じられますが、当時の弘道館は広大でした。弘道館の白壁の退出専用口を出たところに広がるのは、かつての文館の敷地跡。明治元年の弘道館の戦いで焼失し、現在は梅林になっています。
梅林に沿ってなおも進むと、梅の木立の向こうに八角形のお堂が見えてきます。建学の精神「弘道館記碑」を納めた八卦堂です。
通常は写真のように扉は閉じられていますが、梅まつり期間中には開扉され、「弘道館記碑」を見ることができます。2024年の開扉予定は3月2~10日です。
八卦堂を過ぎると、鹿島神社が見えてきます。安政4年(1857)の弘道館の開館式と同時に、常陸一の宮である鹿島神宮から分霊を勧請して遷座祭が行われました。鹿島神社の社殿に向かって左手にある梅の古木は、斉昭公お手植えと伝わるご神木の鈴梅です。今でも見事に花を咲かせます。
社殿の奥にある石碑は「種梅記碑」。斉昭公自身の手で、水戸に積極的に梅を植えた理由が記されています。
一、梅は他の花に先駆けて雪の中でも咲き、詩歌の題材となる。
二、梅の実には酸が含まれ、喉の渇きを取り、疲れを癒やす効果がある。
三、梅干しは保存が利き、防腐・殺菌効果もあるので、有事の際の非常食として役立つ。
さすが文武両道の教育で藩を立て直した名君。梅に魅せられた理由は、その美しさや香りだけでなく、実用としても役立つからだったのですね。
梅まつりの間は、楽しいイベントも目白押し。第128回水戸の梅まつりの公式ウェブサイトで最新のイベントスケジュールをチェックしてくださいね。
■水戸の梅まつり
TEL:029-224-0441(水戸観光コンベンション協会)
HP:https://ift.tt/cWVY2Q3
Text:松尾裕美
●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。
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