PROFILE: 2010年にマーケティング ディレクターとしてクリスチャン・ディオール・クチュールに入社。12年、パルファン・クリスチャン・ディオールのメゾン ジェネラル ディレクターを経て、19年にゲラン社長兼最高経営責任者に就任。23年から現職 PHOTO : TAMEKI OSHIRO
「ディオール(DIOR)」は創業者クリスチャン・ディオール(Christian Dior)のクリエイションと物語を根幹に据え、時代背景や人々の心を反映しながら80年近くの歴史を紡いできた。創業とともに発表したフレグランス“ミス ディオール”を中心に、メイクアップやスキンケアなど全カテゴリーにヒット商品を抱え、幅広いファンを取り込む。開催中の「ミス ディオール展覧会 ある女性の物語」に合わせて来日したヴェロニク・クルトワ(Veronique Courtois)=パルファン・クリスチャン・ディオール プレジデント兼CEOに、メディア初となるインタビューを実施し、展覧会の狙いからメゾンの強さの秘訣まで話を聞いた。
“ミス ディオール”は単なるフレグランスではない
WWD:「ディオール」にとって“ミス ディオール”はどんな存在か。
ヴェロニク・クルトワ=パルファン・クリスチャン・ディオール プレジデント兼CEO(以下、クルトワCEO):「ディオール」の代名詞だ。クリスチャン・ディオールは1947年2月12日、初のファッションショーと同時にフレグランス“ミス ディオール”を発表した。「ディオール」は、ドレスと香りから生まれたと言える。また、クリスチャン・ディオールは自身について、クチュリエでありパフューマーでありたいと公言していた。第2次世界大戦後、悲しみに満ちていたフランスで、女性たちがエレガンスを通してインスピレーションを得られる時代を思い描き創作したのが“ミス ディオール”だ。最初のコレクションは後に「ニュールック」と呼ばれ、世界の注目を集め今に至っている。われわれとって、“ミス ディオール”は単なるフレグランスではない。エレガンスと革新的な精神、そしてクリスチャン・ディオール自身の夢を象徴する。
WWD:展覧会ではどんなメッセージを表現した?
クルトワCEO:「ディオール」のレガシーと現代性の融合を表現した。香りは進化し、世界も進化している。展覧会ではこのアイコニックなフレグランスの誕生から、今年フランシス・クルジャンが考案した最新作に至るまで、時代の変化をどう反映し、進化してきたかを振り返る。約80年にわたって築いてきた“ミス・ディオール”の精神を再発見してほしい。「ディオール」の根幹に流れる不変のDNAと、進化しながら築き上げたレガシーは、長年のファンのみならず若い世代にも響くだろう。
進化し続けることで、若さと輝きを失わない
WWD:フランシス・クルジャン(Francis Kurkdjian)による“ミス ディオール”が生まれた背景は?
クルトワCEO:“ミス ディオール”は、クリスチャン・ディオール自身の手から生まれ、その時代の女性を尊重しながら、情熱的なクリエイターによって繰り返し再解釈・創作されてきた。時代を超えて進化し続けることで、若さと輝きを失わずに現在に至っている。クルジャンの最新の解釈も同様だ。最新作ではクルジャンもまた、クリスチャン・ディオールに深い敬意を払い、作り上げた。“永遠の若さ”からインスピレーションを得て、多様で豊かな香調を取り入れ、ジャスミンに新たな解釈を加えることで現代的に仕上げた。これはまさに革新的な「ニュールック」だ。
WWD:2022年から23年にかけて東京で開催した「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展に続き、再び建築家の重松象平が空間デザインを手掛けた。
クルトワCEO:重松氏は、素晴らしい建築家であり空間デザイナーだ。現代的なデザインと「ディオール」が長年大切にしてきた文化を融合させる才能がある。
WWD:“ミス ディオール”はアーティストとのコラボレーションも盛んだ。その理由は?
クルトワCEO:アーティストは、世界を独自の視点で見て、常に問題提起する。その視点を取り入れ、物事を新しい角度から見ることで、“ミス ディオール”は革新を続けている。また、クリスチャン・ディオールは元々ギャラリーオーナーで常にアーティストに囲まれていた。われわれには、この伝統を受け継ぐ義務がある。今回注目すべきは、フランス人アーティスト、エヴァ・ジョスパンとのコラボレーションだ。ムンバイの女性による手刺しゅうの部屋と限定エディションを発表した。他にも、ナタリー・ポートマンがキャンペーンフィルムで着用したオートクチュールドレスをはじめ、アートピースや歴代の“ミス ディオール”の貴重なアーカイブを展示する。アーティストと共に未来を大胆に見据えることが重要だ。
クチュールとフレグランスの物語は相互的であり、
ますます緊密に協力していく
WWD:クリエイティブ ディレクターを務めるマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)やキム・ジョーンズ(Kim Jones)は、ファッションやビューティのアーカイブに触発されている。
クルトワCEO:マリア・グラツィアの最新の24-25年秋冬コレクションは、今回展示している1967年の「ディオール」初のレディトゥウエア コレクション「ミス ディオール」から着想している。エヴァ・ジョスパンの美しい刺しゅうの限定ボトルもコレクションにおける協力から誕生したもの。クチュールとフレグランスの物語は相互的であり、ますます緊密に協力していく。これが“ミス ディオール”をより豊かにし、他の香りとは全く異なる存在に導く理由だ。
WWD:日本のフレグランス市場で“ミス ディオール”に焦点を当てる狙いは?
クルトワCEO:日本のフレグランス市場には大きな成長の可能性がある。「ディオール」のフレグランスはすでに日本で人気を獲得し、数多くのベストコスメを受賞している。香りは、感情的な夢の世界だ。自分をセクシーに見せるためでなく、自分らしさを表現し、エンパワーメントしてくれるもの。口紅と同じようにどの色を選ぶのか、どの香りを選ぶのかはその人の個性に委ねられる。自己表現の手段だと伝えられたら、より市場に広まるだろう。日本の若い世代はフレグランスに興味を持ち、強く引きつけられていると見ている。
WWD:フレグランスだけでなく、メイクやスキンケアも好調だ。全カテゴリーでのメゾンの強さの秘訣をどう分析するか。
クルトワCEO:まず、クリスチャン・ディオールの天才的なビジョンから始まっていること。「ディオール」は、純粋で私的なものから生まれた。また、商品の品質にも献身的にこだわっている。店内での感情的な体験も重要だ。例えば“リップ グロウ”を購入した若い女性は、その瞬間から「ディオール」ファミリーの一員になり、メゾンの一部となったように感じるだろう。これはエントリープライスから最も高価な商品まで、全てに共通する。これがメゾンの深みを生み出し、成功の一助となっている。今回の展覧会のような没入型の体験は、顧客がメゾンと感覚的に関わり、背後の豊かなレガシーと革新を伝える。今後も各国に応じた施策で、伝統と現代性のバランスを保ちながら成長を続けていく。
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