どうですか皆さん。不要不急の外出、控えてますか?
僕なんかはまともに働いてもいないし、ただでさえ暇な時間を持て余しているというのに、加えて家からの外出まで制限されてしまったら、本当にやることがありません。なんとなく水を一気飲みしてみたり、壁をやさしく触ったりと、穴を掘って埋める拷問のように無意味な時間を過ごしています。
これじゃあ記事のネタも見つからない……いや待てよ……“掘る”……これだ! というわけで今回は、Amazonプライムビデオに眠る謎の映画から隠れたお宝をディグってみる記事です。
映画を撮るために上京したはずが、なぜかモノマネでウケてしまったライター・城戸による映画コラム。今回は、Amazonプライムビデオで見つけたよく分からない作品を紹介します。
よく利用する方なら分かると思いますが、プライムビデオ最大の特徴といえば、かゆいところに手が届かないUIでしょう。あれ何なんすかね。新着が探しづらかったり、ジャンル検索が糞雑魚だったり……スマホアプリを使えば割とマシですけど、やっぱり他の配信サービスと比べるとダントツで扱いにくい。
代わりに「この商品をご覧になった人はこんな商品もご覧になっています」といつもの調子で類似作品を勧めてくるわけですが、提示されたリストをぼーっと眺めているとあることに気が付きました。
知らん映画がいっぱいある。
絶妙に安っぽいサムネイルに、安っぽいタイトルに、安っぽい惹句(じゃっく)……。おそらくこの映画たちは日本でDVD化もされておらず、アマゾンが配給権を買い付けて、邦題と字幕をつけて配信しているのだと思われます。つまり、Amazonプライムでしか観られない映画だということ。
Filmarksでこれらの映画を探してみても、レビューが2,3件しかなかったり、そもそも作品情報が登録されていなかったりと、とにかくマイナーな作品群。ざっと調べてみるとどうも20本〜30本ほどあるようで、今回はその中から気になるものを実際に鑑賞し、正直な感想をレビューしていきたいと思います。どれからいこうかな〜!
「チャーリー:ザ・モンスター」
スプラッターホラーです。実は本作、「拷問男」「Boar」など、やたらグロ描写に気合の入った映画を送り出してきたクリス・サン監督の新作ということで、この企画とは関係なく鑑賞してました。で、その内容はというと……まあ〜かったるい。
若者(?)4人組が、行方不明者が続出する土地にキャンプに行くという、何度見たか分からない導入部分がなんと1時間以上続きます。これにはさすがに頭を抱えてしまいましたが、あのクリス・サン監督なんだから、チャーリーによる殺戮(さつりく)が始まれば盛り上がるはず……と信じて観続けていると、やっと1組目の犠牲者が! しかもトラクターの下敷きにされ頭をつぶされるという芸術的な死に様! グロは控え目ながらも、エグさはしっかりと伝わってくる素晴らしい塩梅(あんばい)に「これは期待できるぞ」と姿勢を正します。
すると早くも次の犠牲者が。殺害方法はペニスちょん切り! 2人目にしてペニスグロを持ってくるとは、盛り上げ方を分かっていますね。さあ、断面図を見せてくれ……おや? 画面がぼやけてるぞ? どうして? ペニスの断面が見えない……。まさかこれは……?
そう、グロ以外まったくいいトコ無しなのに、そのグロにボカシがかかっているのです。そのシーン以降、残虐描写には全てボカシが。ボカシの向こうを想像するに、大変すばらしいグロ描写だと予想できるのですが……これは本当にトホホでした。DVDになんないかなあ。
「ワイルド・ウルフ 危険の代償」
カナダの犯罪スリラーです。「起死回生の一発逆転を狙う衝撃サスペンスアクション!」「誰もこの男を止めることはできない!」なんて惹句の躍るサムネイル。イケイケなガイリッチー的スリラーを期待してチョイスしてみたのですが……まあ良くも悪くも地味な映画でした。どんよりしたカナダの空の下で、どんよりしたことが起きていくという、嫌いじゃないけど、期待したのとは違うなあ……といった感じ。
お話としては、都会でそこそこの財を成したものの現在はうまくいっていない主人公が、勝手に担保に入れた父の家を守るために帰省、再会した旧友と共に大麻ビジネスに手を染めていくが……といったもの。
悪事に手を染め、どんどんドツボにハマっていく主人公……と思いきや、その冷静さと頭脳で何とかピンチをかいくぐっていく様が見どころといえるでしょう。ただ、ぶっちゃけまっったく大したことは起こらず、非常に規模の小さい出来事を演出でうまく見せる、典型的な低予算映画。そう割り切ってみれば楽しめると思いますが、いかんせん地味すぎて……。それでもソツなく作られてますし、お好きな方もいると思います。個人的には結構アリな作品でした。
「エイリアン・ドミサイル」
はい来ました。いや〜うれしかった。これだからB級映画をディグるのはやめられないんです。こちらのアメリカ製SFスリラー、超駄作です。いやーヒドかった。前2作を通して、まったく知られていない映画とはいえ割としっかりしてるじゃん、なんて思ってたらコレですよ。びっくりしました。
一応お話を紹介すると、森にキャンプにやってきた若者たちが何やら宇宙人らしき存在と接触するというもの。一行は主人公の叔父の別荘(キャンピングカー)に泊まるんですが、この叔父は宇宙人の研究をしていて、あと自然を大切にしている人で、今は行方不明になっている、という設定がちんたらと語られたあと、なんやかんやあって叔父さんは木になっていたことが発覚します。木です。行方不明になってた叔父さんは、実は木になってたんです。何で?
とにかく脚本・演出・演技などあらゆる点で褒めるところがない本作。しかも、そのダメさ加減をゲラゲラ笑いながら鑑賞する楽しみ方にも至らない、何とも懐の狭い作品でした。尺が70分ちょっとしか無いので、こういうZ級映画に触れたい、なんて人には超オススメです。軽く調べてみると、どうも役者のほとんどが素人、監督も初長編作とのことで、素人たちによる自主映画、とでも思えば意外とイケるかもしれません。クレジットに制作会社がついてるんで、自主映画とはいえませんが……。
「ウォリアー・ロード 戦士の道」
青春ドラマです。こちらは、しっかり映画にはなっていたものの、すこし取っつきにくい印象。主人公が大学の文学科で、自身の夏の出来事を短編小説という形で発表するという構成。並行して回想シーンで過去の物語が語られます。そういうお話だけあって、作品全体にも文学的だったり、詩的な香りが。それ自体は嫌いじゃないですけど、どうも起きてる出来事がしょぼいんで、単に文学でごまかされている気分に……。「あの夏、忘れ難い衝撃の出来事があった――」とは云われてますけど、結局こいつらが強盗をしてビーチに遊びに出ただけですからね。
気に入る人もいるとは思いますが、個人的にはあまりスッキリせず気分の良くない作品でした。しっかり拾いきれてないだけかもしれないので、気になる方はぜひ。僕にはよくわかんなかったなあ。
「トラブル・デイズ」
アメリカのプロレス団体「WWE」制作の犯罪ドラマ。主演はWWEのスター選手、トリプルH。そのジャンルには詳しくないのですが、スゴイ有名人だそうです。こんなジャケに加えて、WWEのスター選手が主演ともなれば、当然ゴリゴリのアクションを期待するところですが……こちらも非常に規模の小さい地味〜な映画でした。
アクションシーンは数える程度。お話は、13年務めた刑務所から出所した主人公。犯罪行為から足を洗い、このまま平穏に暮らしたいところだが、彼の犯罪の才能を信じる悪友のAJは彼を放っておくはずがなく……といった内容。共演に、マイケル・ラパポート、パーカー・ポージー、そしてブルース・ダーンと、結構な役者がそろっていることもあり、面白くないわけではないのですが、やはり首をかしげずにはいられませんでした。
やたらと付きまとってくる親友AJに振り回され続け、ヤレヤレ顔の主人公。そのAJが目の前で殺人を犯しても、一緒に死体を片付けてあげる親切ぶり。「そんなことやめろよ!」とか言うだけで、罪悪感に苦しむ様子もない主人公は、一切感情移入のできない存在。「ただ平穏に暮らしたい」と身の回りの犯罪行為を見て見ぬフリする主人公に罰が下るかと思いきや、なんと終盤は主人公とAJの友情話になっていくんだからビックリ。ここまで倫理観がバカになっている映画も珍しいかもしれません。そういう意味では結構面白かったです。
「スクール・デイズ」
少し気分を変えたかったので、次はこちらをチョイス。あまりにも直球なタイトルに、いかにも爽やかそうなビジュアル。爽やかすぎてうさんくささすら感じますが、蝶ネクタイのエド・ハリスという絵面が面白かったので少し期待しながら鑑賞しました。
ああ、安心した。このまま良い映画にたどり着けなかったら記事にならないところでした。このスクール・デイズ、佳作、いや傑作と言っていいでしょう。非常に丁寧に作られた、ド直球の青春学園ドラマでした。
舞台は1965年。異様に高い背と大きい耳、赤毛に決して小顔とはいえないルックスで、学校の子どもたちからいじめられている、通称ビッグ・G。そんな彼と授業の課題でペアを組むことになった主人公アンディは、厄介者を押し付けられたと落胆するものの、彼の真っすぐな性格と強い意志にだんだんと心を動かされ始め……といったお話。ビッグGへのいじめ問題に加え、教育問題、そして1965年当時の同性愛差別についても描かれています。
基本的にはファミリー向けの作品。大胆な部分は無いものの、先述の通り非常に丁寧に作られている印象です。あくまで最低限に抑えられた演出で、いじめ問題や、同性愛差別についても繊細に描きます。お子様が楽しめることはもちろん、時代背景や子どもたちの姿から、大人たちも学べることが多いはず。さらに、名優エド・ハリスが教師として子供たちを正しく導く役で、説得力ありまくりの演技を披露するのも見逃せません。蝶ネクタイを着けたおちゃめなエド・ハリスを好きにならない生徒なんていませんよ。
日本語の文献がほとんど無く、情報がいまいち分からないのですが、どうも原作となった本があるようで。そちらもチェックしてみたくなる映画でした。いいの見つけられてうれし〜。
「フレッシュ・ミート サイケな家族」
最後にチョイスしたのはこちら。ニュージーランドのホラーコメディです。ホラーで「ミート」といえば人肉と相場が決まっていますが、本作もそれに漏れずカニバルコメディでした。強盗団が押し入ったのは人肉食一家だった――! ってだけのお話で、そこからは基本的にバタバタしているだけの展開。
スプラッター描写はなかなか気合が入っており見応えがあるのですが、肝心のコメディ部分が何とも垢抜けない印象。個人的にこういう映画ではセンス系の笑いが欲しいんですが、本作はとにかく下品な笑いに終始。ブラックジョークってそういうことじゃないよなあ……という。同ジャンルの傑作が多いからこそ、少し微妙な感想にはなってしまいましたが、中盤のバタバタ具合とか、人物の恋愛模様とかは素直に楽しかったので、ご興味のある方は一見の価値アリだと思いますよ。
今回は7本鑑賞してみましたが、個人的に拾い物だったのは「スクール・デイズ」「ワイルド・ウルフ」ですね。特に「スクール・デイズ」は劇場公開レベルのクオリティ。ぜひ鑑賞してみてください。
掘っても掘っても出てくる、アマゾンプライムの謎映画。今回は個人的に「うーん?」という映画が多かったですが、ご紹介したのはほんの一部。掘って掘って傑作を見つける喜びを、ぜひ皆さんにも知ってほしい。いくらジャケットがつまらなそうでも、中身はすばらしい映画かもしれません。人と映画は、外見だけで判断してはならないのです。
<城戸>
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April 17, 2020 at 05:00PM
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