「大会の成功と日本選手の活躍を願い、幸吉さんと共に走りたい」。メキシコ五輪男子マラソン銀メダリストの君原健二さん(79)=北九州市=は、亡き盟友の面影を胸に県内聖火リレー最終日の3月27日、好敵手だった前回の東京五輪男子マラソン銅メダリスト円谷幸吉の故郷を走る。
若き日に切磋琢磨(せっさたくま)し、突然この世を去った亡き友との別れから53年がたった。円谷の名を冠した須賀川市のメモリアルマラソンには、毎年のように参加している。通い続けるうち、友の古里は自分の「第二の古里」とさえ思うようになった。だからこそ「ここで聖火ランナーを務められるのは光栄」と話す。
欠かすことのない円谷の墓参りでは、ビールを半分墓にかけ、残りを自分で味わう。1964年の東京五輪直前の夏、札幌の大会で2人そろって1万メートルの日本記録を更新、円谷とビールで祝杯を挙げた。「このとってもうれしかった思い出が、私の墓参りの流儀になった」。戦後の男子マラソン黄金期を円谷と共に過ごした、あの頃の思い出は今も鮮明だ。
昨年の五輪と聖火リレーの延期は「やむを得ない判断」と話す君原さん。「年相応に衰えを感じる」と苦笑するが、今もジョギングは続けている。「本番まであと1カ月。きっとできるだろうと、楽しみにしている」
サルビアの道準備
君原さんが走る予定の須賀川市では、前回東京五輪聖火リレーでコースを彩った「サルビアの道」復活の準備が再び進んでいる。市フラワーセンターでは、出番を待つ約3000株のサルビアが順調に育っている。
「道」復活を目指す市民団体「円谷幸吉・レガシーサルビアの会」。昨年の五輪延期で計画は頓挫したが、行き場を失ったサルビアが全国各地に引き取られ、地元の顕彰活動も広く浸透するなど、希望も見えた。安藤喜勝会長(71)は「やりきる。この一念だ」と力を込める。
開催の是非を巡る議論に「考え方はいろいろ」と安藤会長。ただ「選手はもちろん、関係者の努力が水の泡にならないように」と願う。トーチを思わせる、燃え盛るような赤いサルビア。「花咲くコースでランナーを迎えたい」。57年前の感動がよみがえるように。
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