2021年04月10日07時46分
東京電力福島第1原発の処理水処分方法をめぐり、菅義偉首相がこの時期に海洋放出の方針を決めたのは、貯水タンクの容量が限界に近づき、時間切れが迫っているとの判断からだ。ただ、今は参院補選・再選挙のさなか。東京五輪と衆院選も近づいており、自民党からは「なぜ今なのか」と風評被害やイメージダウンへの不安から戸惑う声も漏れる。
原発処理水、海洋放出決定へ 13日にも関係閣僚会議―福島第1、漁業者反発必至
「いつまでも先延ばしにできない」。政府高官は9日、首相の胸中をこう代弁した。首相に近い自民党幹部は「いずれ決断しなければならない。国民にも理解してもらえるはずだ」と語った。
政府内では早い段階から海洋放出が現実的との見解が強かった。経済産業省の専門家会合は2016年に「海洋放出が最も期間が短く最も費用が安い」との報告書をまとめた。それでもこれまで海洋放出に踏み出せなかったのは「漁業関係者の反発を恐れた」(政府関係者)からだ。
政府が手をこまぬいている間も第1原発からは汚染水が発生。特殊機器で放射性物質を除去して処理水に浄化し、1000基を超える敷地内のタンクにためてきた。それも22年秋ごろには満杯になると予想されており、このままでは廃炉作業に影響しかねないとの懸念が出ていた。
首相は昨年9月に就任すると、すぐに停滞打開に向けて動き始めたようだ。翌10月にはいったん関係閣僚会議をセット。このときは全国漁業協同組合連合会と調整がつかず日程が流れたが、1月に新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言を発令する前後にも再び決着を試みた。
首相は宣言解除を待つように7日に全漁連の岸宏会長と会談し、処理水処分への協力を要請した。このタイミングについて、政府関係者は「海洋放出を決めても実行までに年単位で時間がかかるため、今がぎりぎりだ」と説明。自民党関係者は「安倍晋三前首相でも動かせなかった問題を動かしたとアピールしたいのだろう」と解説する。
もっとも、正式決定の関係閣僚会議が想定される13日は衆院補選の告示日。参院補選・再選挙も行われている。秋までに衆院選も控え、自民党若手議員は「なぜ補選の前に」と絶句。中堅議員は「コロナのどさくさ紛れに結論を出そうとしている。全漁連と一緒に声を上げる」と憤る。
経産省関係者は「希釈するから放射性物質は飲料基準より低くなる」と強調する。しかし、海洋放出にはこれまで韓国などが「海洋環境に影響する」と指摘してきた経緯がある。閣僚経験者の1人は「韓国は必ず反応してくる。五輪にも影響する可能性がある」と語った。
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