千葉県北部を中心に目撃情報が相次いでいた南アフリカに生息する絶滅危惧種のミナミジサイチョウが5日午後3時前、千葉県白井市平塚の農地で無事に捕獲された。

19年11月に茨城県内の猛禽(もうきん)類販売店から逃げだした、黒い体に顔周辺が真っ赤な“怪鳥”。捕獲現場を偶然通りかかった千葉県内の女性は「(鳥は)おとなしく抱かれていました。カゴに入れる時もスムーズで、一言も鳴き声は聞こえませんでした」と状況を説明。一緒にいた4歳の長男も巨大なミナミジサイチョウに驚きの表情も、「おっきい!」と喜んでいたという。

前日4日は販売店従業員ら3人により直径約1メートルの網で捕獲を試みたが失敗。この日は、鳥類のスペシャリスト集団の協力を得て、7人体制の特別捕獲チームを結成した。夜明け前後の早朝から分散して捜索し、前日から約1キロ南の下手賀沼近くで発見。最終的には2人で大きな網を使って鳥を追い詰め、かぶせた。約1メートルある体を右手で抱え、名前の由来でもあるサイの角のような固く立派なくちばしを左手で押さえた。店主は逃走や周辺住民に不安を与えたことを謝罪しながら、約1・5メートル四方のカゴに入れた。

茨城県の牛久市を皮切りに、我孫子市の中央学院大野球部グラウンドにも訪問。今年に入ってからは柏市などの手賀沼周辺に定住。ネギ畑で作業中の男性は「たまに姿を見ていたから、捕まってしまうと少し寂しい気もする。この場所を気に入ってくれていたと思う」と複雑な表情。ヘビやカエルを丸のみする姿に恐怖感を抱く人もいた一方、小学生などの興味も引き、行動や生態系を学ぶ教材としても貢献していた。

捕獲後は、約1年半前まで過ごしていた販売店へ移送。もの静かなジサイチョウを“実家”で迎えたタカやフクロウなど100羽以上の猛禽類たちは、「お帰り」と叫ぶかのように激しく鳴き声をあげていた。【清水優、鎌田直秀】

◆ミナミジサイチョウ サイチョウ目ジサイチョウ科で絶滅危惧種に指定されている鳥。中央~南部アフリカのサバンナに生息。ヘビ、トカゲなどの爬虫類や昆虫などを食べる肉食性。異名は草原の掃除屋。アフリカでは家周辺でサソリなどの危険生物も食べてくれる益鳥として飼われている場合もある。大きな個体は全長で130センチ、6キロに成長。両翼を広げた長さは約2メートル。全身が黒色で、のどと眼の付近が鮮やかな赤色。飛翔距離は短く、歩いて移動することが多い。昼行性で夜間は天敵に襲われないように樹上生活をする。埼玉県こども動物自然公園では09年に日本初の繁殖に成功。寿命は50年近い。