湯川うらら
平安時代に「南無阿弥陀仏」と唱えて各地を行脚した僧侶・空也上人(くうやしょうにん、903~972)の没後1050年に合わせ、空也が創建した六波羅蜜寺(ろくはらみつじ、京都)と高松市のお香メーカー「一(いち)」が、「文香(ふみこう)」を制作した。
文香は手紙に添えるお香。平安時代の貴族たちは、恋文に香りを添えて思いを伝え合っていた。その平安期、疫病が流行すると、空也は念仏を唱えて各地を歩き、市民に寄り添ったとされる。
六波羅蜜寺は空也をイメージした文香の制作を一に依頼。「空也文香」と名付け、縦9センチ、横5・5センチの名刺サイズに。お財布や名刺入れに入れると、紙や布にすがすがしく、懐かしい香りが移る。
香木の白檀(びゃくだん)、漢方の原料で抗菌作用がある丁子(ちょうじ)、桂皮(けいひ)(シナモン)など8種を調合した。昔からよく使われている原料を中心に使うことで、空也が生きた時代の香りを表現したという。
住職の川崎純性さんは「香りを通して、空也様がどのように生きられた方かを知っていただければと思っています」。
調合は、一の社長・岩佐一史さん(35)が担った。岩佐さんの実家は香川県内の仏壇仏具店。大学卒業後に仏具の卸問屋で修業をしていた時、線香の業者に最高峰の香木の伽羅(きゃら)をかがせてもらった。香りの良さに感動し、お香の勉強を始めると、奥深い香りや知識がほとんど知られていないと気がついた。
「感動を伝えていくことが、お寺と人々をつなぐ架け橋になるのでは」
実家の店で働き始め、2014年からオリジナルの線香や体に塗る「塗香(ずこう)」などを制作。四国霊場の寺院やアーティストなどの依頼で、それぞれのイメージに合わせたお香も手がけてきた。20年に独立し、お香を通じて日本の伝統文化に関心を持ってもらおうと、国内外で講師としても活動する。岩佐さんは「香りと記憶の結びつきは強い。人が生きた証しや思い出の場所を香りとして残し、伝えていきたい」と話している。
空也文香(税込み600円)は、1日から東京国立博物館で始まった特別展「空也上人と六波羅蜜寺」(朝日新聞社など主催)と銀座蔦屋書店(東京都中央区)の期間限定のフェアで販売。5月8日まで(フェアの終了日は変更の可能性あり)。問い合わせは、一(080・2379・9535)。(湯川うらら)
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