「イチゴはいまが旬」というと、意外に思う人も少なくないのでは? ハウス栽培でほぼ通年で出回っているものの、本来は晩春から初夏を代表する果物だ。イチゴ狩りのシーズンも、そろそろ終盤を迎えようとしている。(榊聡美)
はじける果汁
千葉県印西市にある観光イチゴ園「和田農園」。ハウスに入り、大きな実を探しながら奥へ進んでいくと、マスクをしていても甘酸っぱい芳香が鼻腔をくすぐる。
「幸せな気持ちになる香りですね」。同農園代表の和田和弘さん(58)にそう告げると、笑みをたたえながら「もう僕らは慣れてしまって…」。
イチゴは一つの株に次々とたくさんの実をつける。漢字で書くと「苺」。「母」はどんどん子株を生み出す、という意味がある。秋に苗を植え、気温がぐっと下がる頃、布団をかけるように黒いシートを敷く。「もともとは初夏の作物ですから、土壌の温度を上げて『勘違い』させるんです」
最初に咲いた花から実ができ、1月半ばからイチゴ狩りのシーズンが始まる。いまは4期目の実だという。
栽培しているのは、「とちおとめ」「紅ほっぺ」「章姫(あきひめ)」「やよいひめ」の4品種。個性の異なる品種の食べ比べを目当てに、週末には家族連れやカップルでにぎわう。
「『どの品種がおすすめですか?』『どれが甘いですか?』とよく聞かれますが、まずは食べてみてお気に入りを見つけてください、と答えています」
何と言っても新鮮そのもののおいしさが味わえるのがイチゴ狩りの醍醐味。へたをつまんで口に運ぶと、甘い果汁がじゅわっとはじけた。みずみずしいおいしさに、思わず頰が緩む。
実はどこにある?
「基本的には好きなように食べるのが一番ですが、イチゴは尖った先端のほうが糖度が高いんですよ」と和田さん。
今度はへたを取って、へたのほうから食べ進めてみる。だんだん甘みが増して、満足度がさらに上がった。
こんなに身近な食べ物でも、まだまだ驚くことが潜んでいた。普段は果物売り場で買うのに、植物としては「野菜」の仲間。赤い果実と思って食べているのは「花托(かたく)」といって、花のつけ根部分が肥大したものだとか。では、実はどこに? 「表面にある小さな粒々で、種もこの中にできます」
さらには、イチゴジャムの作り方のコツまで教わった。生産者とふれあい、こうした知識が増えるのも観光農園ならではの魅力だ。
和田さんは35歳で脱サラして農業へ。コメとブドウから始め、1年を通してできるものを、と考えて選んだのがイチゴだった。
人気を呼び、いまでは41棟のハウスで、当初の10倍ほどの約1ヘクタールに栽培が拡大した。「お客さんの『おいしい』と言ってくれる笑顔が僕の励みになっているんです」
イチゴは美肌に欠かせないビタミンCの宝庫。肌の大敵である紫外線が強くなるこの時季が旬なのは、理にかなっている。
からの記事と詳細 ( 【フード】イチゴ 甘酸っぱい「旬」の香り - 産経ニュース )
https://ift.tt/RfVl34t
No comments:
Post a Comment