オランダ生まれの画家、キース・ヴァン・ドンゲン(1877―1968)の日本の美術館では44年ぶりの個展である。第一次世界大戦と第二次世界大戦の間、フランス語では「レザネフォル」、英語では「ローリング・トゥエンティーズ」といわれる「狂騒の時代」を中心に活躍した「エコール・ド・パリ」の画家。華麗かつ繊細な色遣いと、画面に現れる女性たちの優美で官能的な描写が印象的だ。
展覧会は、「新印象派からフォーヴィスムへ」「フォーヴィスムの余波」「レザネフォル」の3章で構成。オランダからパリにやって来たヴァン・ドンゲンは、まずは新聞や雑誌の挿絵で注目されたという。ロートレックに似たタッチで、高いデッサン能力と空間構成の巧みさが目に残る。そこからまもなく、ヴァン・ドンゲンは新印象派に触発され、フォーヴィスムへと移行し、独自の作風を作り上げていく。
ヴァン・ドンゲンが多く描いたのは、ファッショナブルでモダンな女性たちだ。シンプルだが繊細に対象の内面を表現していく描線、乳白色の肌を引き立たせるビビッドな色遣い。パリという大都会で生きる女性たちの心の内側を照らし出すような、猥雑な街の空気を映し出すような、独特の雰囲気を醸し出している。上に挙げた《楽しみ》以外にも、《スペインの踊り子》《ボアを纏った女》《ラ・ペ通り またはパリのラ・ペ通り》など、記憶に残る作品は多いのだ。著作権の関係で、あまり画像を挙げられないのだが残念だが、空気感を切り取る巧みさは、風景画などにも現れている。第3章で展示されている《コンコルド広場》はその典型だろう。
1920年代に入ってからは肖像画に力を注ぎ、その絵は社交界で人気を集めたそうだ。第3章で展示されている《婦人の肖像》や《緑のスカーフ》などを見ていると「なるほど、そうだろうな」と思ってしまう。表情豊かなまなざし、つややかな肌の表現、モデルの女性がとっても個性的、魅力的に描かれているからだ。コケティッシュで繊細なヴァン・ドンゲンの作品の数々は、21世紀の今の眼で見ても十分に新鮮で刺激的なのである。ちなみに「レザネフォル」の時代は、日本で言えばモボモガが闊歩した「大正ロマン」の時代。そんなことを頭に置きながら観覧するのも面白いかもしれない。
(美術展ナビ取材班)
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