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世界農業遺産「大崎耕土」を豊かに潤す川が、またしても無情な牙をむいた。16日朝に名蓋(なぶた)川が決壊し、警戒レベル5に当たる「緊急安全確保」が発令された宮城県大崎市古川矢目(やのめ)地区。住民はなすすべなく、猛威が過ぎ去るのを祈るしかなかった。
名蓋川は2015年関東・東北豪雨で左岸、19年台風19号で右岸が決壊。今回は左岸の別の場所が破れたとみられる。濁流は一帯に広がる水田や大豆畑などを瞬く間にのみ込み、浸水する住宅も相次いだ。
「3年前よりひどい」。会社員本田清二さん(64)の自宅では早朝、急に水位が上昇し床下まで迫った。19年の台風19号は、水が引いた後も流れ着いた大量の稲わらに悩まされた。「壊れた場所を直しても堤防は弱いまま。要望しても、担当が市だ、県だと…。何とかしてほしい」と嘆く。
近所の会社員遠藤直樹さん(45)は「水位は全く引かず、むしろ上がっている。今晩、また雨が強く降ればどうなるのか」と警戒する。市によると、下流の排水機場が水に漬かって使えないため、浸水解消のめどは立っていないという。
避難所の公民館に身を寄せる住民がいる一方、「公民館までの道も冠水して戻れなくなる」(70代女性)と、自宅にとどまる人も。
ただ、浸水で電気やトイレが使えないなど被害の長期化も懸念されたため、消防署員は16日午後、新たに避難を望む人を救助。高齢の女性は「猫がいるから」と自宅に残っていたが、避難するよう説得された。胸まで水に漬かり、助け出された。
大崎市では渋井川、田尻川も氾濫危険水位まで増水し、周辺住民に避難が呼びかけられた。土砂崩れも多発。岩出山下野目では普段は水量の少ない蛭沢川で、橋が折れ曲がり崩落した。近くに住む女性(76)は「ドスン、ギーギーと聞いたことのない音がした。橋が落ちるとは思わなかった」と驚く。
大崎耕土の田園地帯だけではなく、同市古川の中心市街地も内水氾濫で冠水した。数年ごとに水害が起き、もはや常態化した異常気象。鎮める手だてが追い付いていない。
(村上浩康、阿部信男、庄子徳通)
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