茨城県猿島(さしま)郡など県西部で生産される「さしま茶」。江戸時代初期に栽培が始まり、日本で初めてアメリカに輸出したお茶として知られる。産地の一つ、八千代町で120年以上続く「松田製茶」は現在、新たなファン獲得のためにさまざまな加工食品を生み出している。
寒暖差が大きい気候と肥沃(ひよく)な土壌で育ち、濃厚な味と香り、深いコクが特徴。「松田製茶では新芽が出てから2週間程度、黒い遮光ネットをアーチ型のパイプの上から被(かぶ)せる独自農法で栽培します。これによって葉を傷ませず、うまみや甘みを引き出しています」。教えてくれたのは、5代目の松田浩一代表(39)だ。
明治31年、手もみ茶の卸販売業として創業。20歳で4代目祖父の後を継いだ。20代半ばで入会した地元の青年会議所で販路拡大を学び、それまで農家や個人だけだった販売先をスーパーや道の駅へと広げた。
しかし、急須でお茶を入れる機会が減った現代では、茶葉だけで確実に売り上げを上げるのは容易ではない。それならばと、若い人を中心に身近に味わえるアイスやジャム、煎餅などの加工食品の開発に力を入れるようになった。
売り上げは好調で、茶葉がそのまま入った「食べるお茶ジャム」は、甘みの中にわずかなほろ苦さが感じられるのが特徴。ビタミンや食物繊維がたっぷりで、一時在庫が無くなるほどの人気ぶり。「地域の農業を盛り上げたい」という思いも強く、さしま茶と町内のメロンやイチゴとコラボしたアイスを開発。つくば市の「北条米」を使った玄米茶も作った。現在はパウンドケーキを考案中という。
さしま茶の海外輸出を再び目指す「さしま茶生産者輸出協議会」の会長も務める松田さん。「日本茶伝道師として味や魅力を広く伝えていく」と力を込めた。(谷島英里子)
【松田製茶】 明治31年創業。約560アールの茶畑で育てた濃厚な味と香り、深いコクが特徴の「さしま茶」や加工食品を展開する。八千代町水口113。午前9時~午後5時。日曜休業。ホームページからネット通販も可能。【問】0296・48・0174。
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