KADOKAWAは5日、東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件によって贈賄罪で起訴された同社会長の角川歴彦被告が同日付で辞任したと発表した。副会長の松原真樹氏も辞任した。当面は会長は置かず、夏野剛社長らが経営にあたる。弁護士と社外取締役で構成するガバナンス検証委員会を同日付で設置し、事実関係の調査や原因の究明を進める。
KADOKAWAは同日午後5時、都内で記者会見を開いた。夏野剛社長は「このたびの事態により、お客様や株主の皆様に多大なるご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げる」と数秒間頭を下げた。
4日に角川被告と松原副会長から辞任の申し出があり、5日の取締役会で承認した。「大会スポンサー契約締結時の経営者としての責任を鑑みた」という。両氏は会長、副会長を辞任後も取締役を続ける。
同日公表した外部の弁護士で構成した調査チームの報告によると、大会組織委員会元理事の高橋治之容疑者側への資金の支払いが贈賄に該当する可能性があると法務部門から事前に指摘されていた。調査チームの国広正弁護士は「贈賄行為と評価されうる疑わしい行為があった。ガバナンスを徹底的に調査する」と話した。
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夏野社長は「当時は(KADOKAWAの)経営に携わる立場ではなかったので、私は認識していなかった」と関与を否定。指摘を受けてもなお契約が結ばれたことについては「担当者は契約を結ばないといけない必然的な何かがあったのかもしれない」と話した。
五輪汚職を巡り弁護士3人、社外取締役2人で構成するガバナンス検証委員会を5日付で設立した。事実関係の調査、事件を招いたガバナンス体制と原因の究明、再発防止策の提言をする。年内の報告書公表を目指す。
角川被告は旧角川書店の創業家で、KADOKAWAの株式約2%を保有する個人株主第2位でもある。「ワンマン経営」と指摘する業界関係者も多い。「元会長は会社だけでなく業界をリードしてきた偉大な功績がある。元会長の発言は(会社の中で)重みがあった。ただ全ての事業で元会長に判断を仰ぐのは物理的に無理で『ワンマン』とは言いがたい」と夏野社長は指摘した。
夏野社長は東京ガスを経てNTTドコモに入社し、携帯電話向けインターネットサービス「iモード」の立ち上げに携わった。19年にはドワンゴ社長に就任し、動画配信サービス「ニコニコ動画」のコストの見直しなどを進めた。21年6月にKADOKAWA社長を兼務した。大手出版社は創業家が経営する企業が多く、ネットサービス出身者が社長に就くのは珍しい。
東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件による企業イメージの悪化は必至だ。「一部イベントが中止になることはあったが、今期の業績に影響を与えるほどではない」(同社)という。だが、KADOKAWAの株価は3日に一時2574円と、約5カ月ぶりの安値を付けた。
中長期的には事業面でもイメージ悪化の影響を受ける可能性がある。KADOKAWAグループは学校法人角川ドワンゴ学園が運営する通信制高校「N高」向けシステムの提供など教育事業を手掛ける。公共性が求められるだけに、生徒の募集や顧客開拓にはクリーンなイメージは欠かせない。KADOKAWAが制作する映画のスポンサー集めなどにも支障が出る懸念もある。
KADOKAWAの業績は、ゲーム子会社が開発したアクションRPGゲーム「ELDEN RING(エルデンリング)」のヒットなどで好調だ。22年4~6月期の連結純利益は前年同期比90%増の76億円だった。
アニメや映画、ゲーム、動画配信サービスなど多角化戦略が奏功している格好だ。だが、メディアミックス戦略の要である出版事業の重要性は薄れていない。夏野社長はガバナンスを立て直し成長をけん引できるのか。大きな試練が立ちはだかる。(佐藤諒)
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