太めで平たい太平麺を甘辛いウスターソースで炒めた焼きそばに、和風だしのつゆをかけて、揚げ玉やネギなどをトッピングする。「焼きそばにめんつゆ? 何それ。味が想像つかない」と思うかもしれないが、これこそが青森県黒石市が誇るソウルフード「黒石つゆやきそば」だ。
昔ながらの味にこだわっているという、同市の「すずのや」を訪ねてみた。
店内に充満するソースの香りが食欲をそそる中、丼に入ったお目当ての品が運ばれてきた。カツオや昆布などで取ったという和風だしとソースの香りが鼻孔をくすぐる。期待に胸を膨らませながら一口食べた瞬間、モチモチした食感の太平麺に和と洋の異なる味わいが楽しめ、どんどん箸が進む。脇を固める揚げ玉、ネギ、キャベツ、豚バラ肉との相性も文句なし。
店主の鈴木民雄さん(75)の勧めで途中、一味唐辛子を少し掛けてみると、程よい辛さがスープと絶妙に合う。気が付くとスープも飲み干し、何とも言えない味わいとつゆやきそばの奥深さを実感した。
つゆやきそばは、いかにして生まれたのか。
戦後、黒石市にあった製麺所が中国人から中華麺の作り方を教わったときに、乾麺用の太い切り刃で生地を切っていた。これがソースと絡んでうまかったことから、太平麺を使った汁のない普通の焼きそばが「黒石やきそば」となった。
つゆやきそばについては、昭和30年代に「美満寿(みます)」という店で作り置きしていた焼きそばにそばつゆをかけて温かくしたという説や、麺だけでは腹持ちが悪いとしてつゆを足したという説など、諸説あるが、どれも定かではない。
つゆやきそばは、昔から食べられていた黒石やきそばから派生した「ご当地グルメ」というわけだ。
美満寿は後に閉店。つゆやきそばの灯が消えかけたところ、幼い頃から食べていた鈴木さんがその味を復活させ、平成20年には福岡県久留米市で行われたご当地グルメの祭典「B-1グランプリ」に出品した。鈴木さんは「焼きそばの味が残っていないと、つゆやきそばとはいえない」と〝ルーツの味〟にこだわる。
つゆやきそばを伝統の食文化として伝えることを目指したまちおこし団体「黒石つゆやきそば伝紹会」も、会員約40人がさまざまなイベントを通じてPRを推進。同会の会長も務める鈴木さんは「古くから伝わる地元の食の魅力を見直すとともに、つゆやきそばの情報発信に努め、黒石市への誘客と活性化につなげていきたい」と意気込む。(福田徳行)
すずのや 青森県黒石市前町1の3。「黒石つゆやきそば」(700円)と「黒石やきそば」(600円)のほかに、麺1・5玉で両方味わえる「化けやきそば」(800円)がある。すずのやオリジナルのソース(250円)や、持ち帰り用のやきそば(600円)もある。営業時間は午前11時~午後3時。定休日は毎週火曜日と12月31日~1月2日。【問】0172・53・6784。
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