花や樹木の香りを嗅ぐと、心が和んだり爽快な気持ちになったりするもの。そんな香りは、心と体にどんな効果を及ぼすのだろうか。日本アロマ環境協会理事長の熊谷千津さん=写真=に、香りの効能やメカニズムなどを聞いた。
−アロマセラピーとはどういうもの?
「アロマ=芳香と、セラピー=療法を組み合わせた造語です。植物の香り成分を凝縮した精油(エッセンシャルオイル)を使い、心や体のトラブルを穏やかに回復させ、健康増進や美容に役立てようという自然療法です」
−香りの構造は。
「香りには一瞬で気持ちを変える力があります。香りの分子を嗅覚が受け取ると、感情や本能をつかさどる『大脳辺縁系』や、自律神経をつかさどる『視床下部』に情報が伝わり、体温や睡眠、ホルモン分泌、免疫機能などのバランスを整えます」
−精油の仕組みは。
「精油一キロを得るためには、例えばローズなら三〜五トンの花が必要となります。大量の原料植物から、少量しか採れない貴重なものなのです」
−どんな種類がある。
「百種類以上の精油があります。ラベンダーは鎮静作用があり、ストレスで緊張した心と体をリラックスさせます。すっきりとした清涼感のある香りが特徴のペパーミントは、優れたリフレッシュ作用を持ち、ストレスや疲労感を和らげて眠気を抑えます」
−選び方、使い方は。
「自分の心と体が求める好きな香りを見つけましょう。ティッシュやハンカチなどに精油を垂らして香りを楽しむ方法や、立ち上がる香りの湯気を吸入する方法など、楽しみ方はさまざまです。ただし、精油を直接肌に塗ったり飲んだり、目に入れたりしないでください。火気には十分注意してください」
−簡単にできるアロマグッズは。
「マスクに香りを付けるアロマスプレーの作り方や使い方をご紹介しましょう。スプレー容器に水五十ミリリットルとペパーミントの精油二滴、ユーカリの精油三滴を入れて、よく振ります。マスクの外側に三回ほど吹き掛けると、爽やかな香りを楽しめますよ。頻度は一日当たり二〜三回が目安で、スプレーは一〜二週間で使い切ってくださいね」
◆身近に広がる
近年、アロマセラピーは社会のあらゆる場面でも活用されて浸透している。熊谷さんは「ホテルのロビーや空港ラウンジのほか、葬儀社や病院でも空間芳香として使われ始めています。かんきつ系の香りを好む人が多いです」と話す。
ビジネスとしても拡大。リラクセーションサロンで精油を用いたマッサージや、化粧品や雑貨などの製品開発でも注目されている。ヨガレッスンなどアロマの知識を接客やサービスに生かす場面が増えているほか、香りの体験教室で子どもの五感を磨き、自然環境の大切さを伝える「香育」も教育の場で広がっている。
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July 07, 2020 at 05:21AM
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