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Sunday, March 28, 2021

筋肉一筋20年…YouTube筋肉動画で無双、紆余曲折を経たなかやまきんに君が注目されるワケ|秋田魁新報電子版 - 秋田魁新報

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ウェブCMやYouTubeが人気のなかやまきんに君(C)ORICON NewS inc.
ウェブCMやYouTubeが人気のなかやまきんに君(C)ORICON NewS inc.

 芸歴20年を超えるピン芸人・なかやまきんに君が、最近なにかと注目を集めている。もともと、筋肉を生かした一発ギャグで人気を得て、様々なスポーツ番組でも好成績を収めてきた彼。近年はテレビでの露出はそこまで見られないものの、YouTuberとして活躍中。登録者はなんと100万人を超えている。過去には、アメリカに”筋肉留学”したにもかかわらず、「筋肉を減らして帰ってきた」などと揶揄されたこともあったが、20年一筋にやってきた筋肉芸が、いま身を助けていると言っていい。なかやまきんに君、現在に至る紆余曲折を紐解いた。

【写真】「あれ、細くない?」筋肉留学を終え、ちっちゃくなって帰ってきたなかやまきんに君

■YouTube登録者数106万人、「スキップできない」動画広告も話題

 現在、ピン芸人・なかやまきんに君が、ひたすら「パワー!」と連呼するだけのウェブ広告(ダイショー『焼肉一番』)が、「この動画広告だけはスキップしないで見てしまった」「インパクト強すぎ」などなど、YouTubeユーザーの間で話題になっている。例の上腕二頭筋に力を入れて、「パワー!」「ヤー!」と連呼しながらポーズをとるという“だけ”のものだが、きんに君が3人登場したり、小型化したり、子どもがなだれ込んだりするなど、やかましいながらもそのシュールなビジュアルはたしかに頭に残る。

 一方で、昨年インスタに投稿された『鬼滅の刃』のコスプレ写真や“呼吸をマスターできる筋トレ”動画も注目を集めた。なかでも嘴平伊之助のコスプレは、きんに君の筋肉隆々な姿がぴったりハマり、SNSでは「リアルすぎる」と称賛。あらためて、彼の肉体美を目にした人も多いだろう。少し遡るが、2019年の『仮面ライダーゼロワン』(テレビ朝日系)第1話放送時には、人型ロボット・腹筋崩壊太郎役の怪演がTwitterでトレンド入りしたこともあった。

 これら動画広告もSNS投稿も、ある意味それ自体がきんに君の“芸風”そのものとも言えるし、実際、伊之助コスプレにしろ腹筋崩壊太郎にしろ、きんに君にしかできない、あるいはきんに君だからこそできる芸となっている。そして、その最たるものが、きんに君のYouTubeチャンネル『ザ・きんにくTV』だ。筋肉にまつわるゆるいネタから、ガチ勢も納得のまじめな解説まで網羅したこのチャンネルの登録者数は、実に106万人超(3月28日現在)。昨年投稿された一番人気の動画は、671万回再生を記録している(ちなみにこの再生数は、闇営業騒動で大きな話題を集めた宮迫博之の謝罪動画569万回を超えている)。

 散発的にネット、SNS界隈で何かと“爪痕”を残し続けているきんに君だが、そのすべてが筋肉がらみ。ここまでブレない方向性で生き残り続けていること自体、脅威と言えるだろう。

 そんなきんに君のデビューは1999年。2006年には、「アメリカ・ノースカロライナ州からやってきた男」という設定のキャラ「キャプテン☆ボンバー」として、ボディビルダー的体格を生かした芸風で『R‐1ぐらんぷり』(フジテレビ系)に決勝進出。同時期の『筋肉番付』や『SASUKE』(ともにTBS系)などの芸能人スポーツ番組で好成績を残すなど、プチブレイクを果たした。

 しかしそのプチブレイクのさなか、同年10月9日(体育の日)に一度目の「筋肉留学」。世間が「筋肉留学ってなんだ?」と困惑するなか、翌年2007年9月に帰国すると、サバンナ・八木真澄と「ザ☆健康ボーイズ」を結成。その年の『M‐1グランプリ』(テレビ朝日系)に準決勝進出したが、さらに翌年の1月には「1年間程度では大した成果が出ない」として2回目の“無期限”筋肉留学を敢行している。周りがすべて英語という環境で3年間学ぶという“ガチ”な留学ののち、2011年2月に帰国。しかし、「線が細くなった」「筋肉を減らして帰ってきた」などと揶揄され、「留学中に何かあったんじゃないか…」という“都市伝説”までが一部で囁かれる結果に。その影響なのか、帰国してからはしばらくその姿を見る機会が減った。

 きんに君も当時のことを『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系・2019年)で語っており、言葉の壁に苦しみ、課題をこなすのに時間を割きすぎた結果、半年に1回程度しか筋トレができなかったと明かしている。

 しかし、そうした告白からもわかるように、彼の生き様はまさに伊之助のごとく猪突猛進、真っ直ぐなのである。その後も、ボン・ジョヴィの「イッツ・マイ・ライフ」に合わせて「ヤー!」とポーズをとったり、「筋肉ルーレット」をはじめとする筋肉芸一本という基本スタイルを崩さず、2019年に「腹筋崩壊太郎」で再注目されるまでその姿勢は変わらない。

■ユーザー側のセンスが問われる?「珍味」な存在感と筋トレガチ勢も納得の知識の両輪

 1980年代、とんねるずやウッチャンナンチャンらを輩出した『お笑いスター誕生!!』(日本テレビ系)で活躍した初の筋肉芸人・ぶるうたすがいるが、筋肉芸のマンネリ化の壁にぶつかって10週勝ち抜くことができず(10週でグランプリ)、大ブレイクには至らなかった。きんに君も筋肉一筋20年、むしろ大ブレイクしないまま筋肉オンリーのスタイルを貫いてきたからこそ、ここにきて“普遍性”“永続性”の凄みを醸し出しているのかもしれない。

 実際、「アーノルド・シュワルツェネッガーの正式な発音」などの筋肉を生かした一発ギャグは、彼にしか出せない唯一無二の瞬発力がある。万人が爆笑するかは疑問だが、子どもにもわかりやすい芸、という強みもある。一方で、東野幸治をして「ひときわ異彩を放つ独特な男」と言わしめ、なぜか年に1回きんに君をゲストに招く『三四郎のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)のお笑いコンビ・三四郎をして「珍味」と言わしめたように、彼の不器用な面白味もまた、その背景にあるのだろう。ある意味、受け取るユーザー側のセンスが問われる部分もあるかもしれないが、人によっては“中毒性”すら感じさせる。それだけの爪痕を残す存在感なのは確かだ。

 武田真治や西川貴教らの筋肉タレントが注目され、一般にも体づくりが流行している今、YouTubeを主戦場にして、筋トレガチ勢を巻き込んで結果を残しているのは、それだけきんに君がひたむきに筋肉に向き合ってきた証拠だろう。もしかすると、ようやく時代がなかやまきんに君に追いついてきたのかもしれない。

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