菅義偉(すが・よしひで)首相(自民党総裁)が党総裁選(17日告示、29日投開票)への出馬を見送ったことで、党内の各派閥は戦略の見直しを迫られる。衆院選への小選挙区制導入を契機に派閥の力が弱まった上に、特に今回は衆院選が近いため選挙基盤の弱い議員が「選挙の顔」となる新総裁に期待し、派閥幹部の意向に応じない構えをみせているのだ。情勢は複雑化している。
「一丸となってやるという動きは全くないようにみえる。今後の派閥の在り方も含めて大きく変わる総裁選になる」
自民党の佐藤勉総務会長は3日のBS日テレ番組でこう語った。実際、各派は態度を固められていない。
最大勢力の細田派(清和政策研究会、96人)は9日に総会を開き、総裁選への対応を協議する。同派出身の安倍晋三前首相は出馬を表明した無派閥の高市早苗前総務相を支持するため同調する議員は多いとみられるが、一枚岩になれるかは不透明だ。一度は出馬を断念した下村博文政調会長も「仲間と相談する」としてくすぶっている。
麻生派(志公会、53人)は河野太郎ワクチン担当相が出馬への意欲を表明。領袖(りょうしゅう)の麻生太郎副総理兼財務相が派としての支援には消極的な一方で、中堅・若手は世論調査で「次の首相にふさわしい政治家」として支持が高い河野氏に期待を寄せており、派の動向は分裂含みだ。
竹下派(平成研究会、52人)は会長代行の茂木敏充外相の出馬を推す声がある。中堅議員は「草刈り場になるくらいなら茂木氏が出て総裁候補だと示すべきだ」と話す。ただ、参院側からは「得票が少なかったら茂木氏に傷がつく」として慎重論も聞こえてくる。
二階派(志帥会、47人)は領袖の二階俊博幹事長の下で一致結束し「勝ち馬に乗る」(閣僚経験者)ことで主流派としての立場を維持してきた。しかし、今回は石破茂元幹事長らの出馬に期待する声があり、高市氏支持を明言する議員もいる。現状で派としてまとまる雰囲気はない。
岸田派(宏池会、46人)は、岸田文雄前政調会長が出馬を表明。石破派(水月会、17人)は石破氏の出馬の可否を含め週明けにも対応を協議する。首相支持を決めていた石原派(近未来政治研究会、10人)の対応は白紙に戻った。
一方、総裁選で1回目の投票では当選者が決まらず、国会議員票の比重が増す決選投票に進めば派閥の合従連衡が勝敗を左右することもあるため、各派幹部は熟慮を重ねている。
各派とも一糸乱れぬ行動は事実上不可能だ。ある派閥幹部は「議員の生き死にがかかっているので、締め付けられない」と話す。総裁選は、首相が不出馬に追い込まれた新型コロナウイルスへの対応など、政策論争を通じて国のかじ取りを任せられるリーダーを生む好機といえるが、現状では「選挙の顔」選びが先行している感は否めない。
若手議員は「一人一人が政策を基準に選べばよいが、自分の選挙のことばかり考えていて情けなくなる」と語った。(沢田大典)
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