料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんがリクエストに応えて料理を作ってくださるという夢の連載。今回はフレッシュバジルを使った手作りジェノベーゼ。ミキサーを使わず、すり鉢ですって作ると、より香り高いひと皿の完成です。
―― 冷水先生、こんにちは。いよいよ梅雨入りですね……。
冷水 気持ちいい季節が終わってしまうのは悲しいですが、すぐまた夏がやってくるので、しばらくの我慢ですね。
―― 恵みの雨で、野菜もすくすく育つし、よしとしましょう!
冷水 それも季節の一環ですからね。
―― 私は去年に引き続き、ベランダにハーブを植えました。バジルに大葉、パクチーにイタリアンパセリ!
冷水 おお、それはすごいですね。お料理するのも楽しくなりそうです。
―― そうなんです。ハーブって結構お値段がするので、買うのはちょっとためらってしまうこともあるのですが、ベランダにわさわさ生えていると、贅沢(ぜいたく)に使えて幸せです。
冷水 じゃあ、今回はハーブをたっぷり使うお料理にしましょうか?
―― それはありがたい!
冷水 バジルがたくさんあるなら、ジェノベーゼパスタなんてどうでしょうか? 市販のソースもありますが、フレッシュバジルを使って手作りするソースは格別ですよ。
―― わあ、すごく贅沢ですね! ぜひ教えていただきたいです。
冷水 みなさん、自宅でジェノベーゼソースを作るときは、ミキサーを使うことが多いと思いますが、今回は機械を使わず、すり鉢ですって作るソースをご紹介したいと思います。
―― なんと! そんなことができるんですか?
冷水 私も以前はミキサーを使っていたのですが、本場イタリアの家庭では食べる直前にすり鉢でバジルをすっていると聞いて、イタリアを旅行した時に、すり鉢を買ってきたんです。これなんですけど……。
―― めちゃくちゃ素敵! 日本のすり鉢とは違って、ころんとしたフォルムが可愛いですね。でも、かなり重いですね。よくこれを持ち帰ってきましたね(笑)。
冷水 オリーブの木でできているらしくて、木の質感がいいなと思って。もちろん日本のすり鉢でも問題なく作れますが、郷に入っては郷に従えと言いますから(笑)。
―― 料理家の鑑(かがみ)です! でも、どうして便利な機械があるのに、わざわざ手でするんですか?
冷水 それは食べてみてからのお楽しみということで。早速作っていきましょう。レシピにはミキサーを使う手順を書いておきますが、すり鉢を使う方は、この本文を参照してくださいね。
―― 材料はバジル、カシューナッツ、にんにく、オリーブオイル。すごくシンプルですね。
冷水 本場では松の実を使いますが、日本では手に入りづらいので、カシューナッツで代用します。まずはすり鉢ににんにくとカシューナッツを入れて潰していきます。
―― あれ、主役のバジルはまだ登場しないんですか?
冷水 ハーブは潰しづらいので、先に固形物を潰して、そこから水分が出てきたところでハーブを加えるんです。
―― なるほど。
冷水 にんにくとナッツが潰れたら、そこにハーブを入れて潰します。すりこぎでたたくようにするとやりやすいです。
―― わ、バジルのいい香りがしてきました。
冷水 バジルが潰れてきたら、何回かに分けてオリーブオイルを加えます。これも一度に入れると潰しにくいので、様子を見ながら少しずつ加えましょうね。
―― なんだか魔女みたいですね(笑)。
冷水 おいしいソースを作る魔女ですよ!(笑) そうそう、ソースに使うオリーブオイルはぜひ、おいしいものを使ってください。香りにクセがありすぎると、せっかくのソースが台無しになってしまうので。
―― ところで、ソースを作る過程で塩は加えないんですか?
冷水 お好みで入れてもいいと思いますが、バジルの香りと風味を味わってほしいので、今日は入れません。パスタを茹(ゆ)でる時に塩を入れるのと、仕上げにパルミジャーノ・レッジャーノをふるので、その塩みで十分です。
―― バジルを堪能するためのパスタですものね。
冷水 さて、ソースはこれで完成です。
―― あれ? まだバジルの繊維が結構残っていますが、これでOKなんですか? ミキサーで作る時は、完全なペースト状になっていたような……。
冷水 手ですったバジルソースの醍醐(だいご)味はここにあるんです。繊維が完全に壊れていない分、風味豊かに仕上がるんです。
―― なるほど〜。期待が膨らんできました!
冷水 あとはパスタを茹でて、ソースをからめるだけです。大きめのボウルにソースを入れておいて、茹で上がった熱々のパスタを加えてあえます。
―― パスタの熱が加わると、バジルの香りがふわ〜っと、立ち上りますね。
冷水 手早く混ぜて、パルミジャーノ・レッジャーノをかけて、召し上がれ。
―― おおお……、これは今まで食べてきたジェノベーゼと明らかに何かが違いますね。なんていうか……バジルを食べている!という感じ。にんにくも塩もオイルも全て控えめで、みんながバジルの引き立て役に徹しているような味です。
冷水 素朴だけれど、滋味深いでしょう?
―― とにかくバジルの香りと風味が格段にいいですね。
冷水 バジルは熱を加えると、どうしても香りが飛んでしまうんです。ミキサーを回すとどうしても熱が伝わってしまうのですが、こうして手ですることで、豊かな香りをキープできるんです。
―― なるほど! 手でするには、ちゃんと意味があったんですね。てっきり先生がお気に入りのすり鉢を使いたいだけかと思っていました(笑)。
冷水 うん、それも一部ありますけど(笑)。
―― 多少手間はかかりますが、この衝撃のおいしさを知ると、またすろう!っていう気持ちになりますね。食べた人は絶対感動すると思うので、おもてなしにもぜひ出してみたいなと思います。
冷水 たくさんバジルを育てて、フレッシュな状態で、ぜひ作ってみてください。
ジェノベーゼパスタ
材料(2人分)
A
-
バジル
20g
-
カシューナッツ
10g
-
にんにく
0.5g
-
EXVオリーブオイル
60ml
- Aの材料をミキサーにかけるか、すり鉢でする。
- パスタを1%弱の塩を入れた熱湯で茹でる。1.を入れたボウルにパスタを加え、混ぜ合わせて器に盛り、仕上げにパルミジャーノ・レッジャーノをふる。
からの記事と詳細 ( バジルの香り際立つ、手作りジェノベーゼのパスタ - 朝日新聞デジタル )
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